これまでに、我々は脾臓の形質様樹状細胞がFGF23を産生し成熟したB細胞がそのリガンドであるKlothoを発現していることを明らかにしFGF23-Klothoシグナルが免疫系にかかわることを示唆してきた。ところで、透析患者の死因の多くを感染症が占め患者の易感染性が治療上重要な課題となっているが、その原因については明らかにされていない。末期腎不全病態形成にFGF23が重要な役割を果たしていることと我々が明らかにしてきたFGF23-Klpthoシグナルが免疫に関わることから透析患者におけるFGF23-Klothoシグナル系の異常が患者の易感染性に関わる可能性が考えられる。そこで、透析患者の末梢血リンパ球について解析を行った。 倫理委員会の承認後、研究参加の同意の得られた健常人5名と導入期を含めた血液透析患者16名について解析を行った。その結果、健常人に比べ透析患者ではリンパ球数、T細胞およびB細胞数の減少を認め、さらに、Klotho陽性T細胞数およびB細胞数が有意に減少していた。患者血清中にKlotho発現低下を起こす物質がないか検討するため、Klotho陽性マウスB細胞株であるA20を健常人もしくは透析患者の血清を加えて培養した。その結果、一部の患者の血清を加えた場合にKlotho発現の低下がみられた。この低下は、培養上清中に切断されたKlothoが認められたことよりプロテアーゼによると考えられた。Klothoを切断するものとしては、プロテアーゼであるBACEとメタロプロテアーゼであるADAM10と17がある。プロテアーゼ阻害薬ではKlotho発現低下は回復せず、ADAM17阻害薬で回復したことよりADAMA17がKlotho発現低下をきたしリンパ球の減少を起こすことで透析患者の易感染性に関わることが示唆された。現在、投稿用の草稿を作成しているところである。
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