研究課題/領域番号 |
16K09654
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
野々口 博史 北里大学, 北里大学メディカルセンター, 部長(医師) (30218341)
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研究分担者 |
泉 裕一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20736243)
安岡 有紀子 北里大学, 医学部, 講師 (50348504)
河原 克雅 北里大学, 医学部, 名誉教授 (70134525) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エリスロポエチン / 糖タンパク / 脱糖鎖 / 低酸素 / 腎臓 |
研究実績の概要 |
腎臓は体液恒常性維持のための水・電解質代謝、酸塩基平衡の調節を司るだけでなく、造血ホルモンであるエリスロポエチンの産生の場でもある。エリスロポエチンは、糖鎖が付いた糖蛋白であり、脱糖鎖処理で22kDaに移動することが知られているため、腎臓、肝臓、血漿、尿でのエリスロポエチンの検出と脱糖鎖での変化を検討した。 ラットを低酸素状態にすることで血漿エリスロポエチン濃度は、500倍程度も上昇する。低酸素4時間のラット血漿をそのままウェスタンブロットに用いても、検出は出来なかった。そこで、脱糖鎖処理を行ったところ、酵素無しで36kDa辺りに幅広のバンドが現れ、脱糖鎖酵素ありで脱糖鎖後のエリスロポエチンの大きさである22kDaに移動した。しかも、脱糖鎖で検出感度が上昇した。ESA製剤であるエスポー、ネスプは、ラットの大量に投与すれば、血中、尿中ともに検出出来、脱糖鎖で22kDaに移動した。半減期が一番長いESA製剤であるミルセラは、PEGが付いているため脱糖鎖で検出感度はむしろ減ったが、ラットのみならず、CKD患者でも血中で検出出来た。低酸素腎では0‐1時間では、バンドの出現は少ないが、2時間で増加し、4時間では、100倍以上に増加し、血漿エリスロポエチン濃度の変化と同じであった。脱糖鎖でのバンドは、低酸素なしでも検出されており、腎では、正常状態でもエリスロポエチンが産生されている事が明らかとなった。一方、肝臓では、低酸素2‐4時間で脱糖鎖出バンドが出現したが、腎に比べて、非常に微量であり、低酸素で肝臓でもエリスロポエチンは産生されているが、メインの産生の場は、これまでの見解通り、腎であることが明らかになった。 以上より、生体試料を用いたウェスタンロットでは、脱糖鎖処理を行う事で、エリスロポエチンを検出できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エリスロポエチン蛋白のウェスタンブロットでの検出は、腎臓や肝臓のサンプルでは問題なく行えたが、血液や尿はそのまま使用しても検出できなかった。そこで、脱糖鎖処理を行ったところ、脱糖鎖酵素無では、普通のウェスタンブロットと同じ幅広バンドを検出し、脱糖鎖酵素ありでは、22kDaにシフトしたバンドを検出できた。デンシトでの解析では、普通のウェスタンブロットでは、低酸素4時間での腎臓でのエリスロポエチン産生増加は数十倍程度にとどまり、血漿エリスロポエチン濃度の1000倍程度の上昇を説明できなかった。一方、脱糖鎖語の22kDaのバンドの解析では、低酸素4時間で1000倍程度まで上昇し、血漿濃度の上昇を同程度であった。肝臓での産生は、低酸素でほとんど増加しなかった。以上より、低酸素で増加する血漿エリスロポエチンは、ほとんどが腎臓で産生されており、肝臓の関与はごくわずかであることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
脱糖鎖処理で血中、尿中エリスロポエチンのWestern blot法での測定が可能となったので、ESA製剤の不正使用に対するドーピングでの活用を目指して、企業と相談中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
特許申請中であるが、国際特許の申請も考慮しており、費用を残しておいた。
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