研究課題
本研究では、心血管リスク管理における腸管ミネラルコルチコイド受容体(MR)の意義を解明するため、MR-floxマウスとvillin-Creマウスにより腸管特異的MR欠損マウス(腸管MR-KO)を作成し、その表現型解析を行った。これまでの検討から、①通常食飼育下では、controlマウスと腸管MR-KOで便中Na排泄量に差はあるものの、両群間で血圧に有意な差はないこと、②control群で見られるDOCA/salt誘発性の血圧上昇が、腸管MR-KOでは50%抑制されること、③低塩食下(0.025% NaCl)では、control群に比し腸管MR-KO群で有意に血圧が低下することを確認し、これらの血圧調節が上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)βおよびγの発現調節を介していることを明らかにした。腸管ではENaCの他に、ナトリウムプロトン交換輸送体(NHE)もNa吸収に重要な役割を果たしていることが知られているが、本マウスモデルでは、NHEの血圧調節への関与は認められなかった。本研究結果は、Na動態を介した血圧調節機能が主に腎尿細管で行われているという既知の考え方を大きく変えるものであり、腎尿細管に加え腸管も同等に血圧調節に寄与していることを明らかにした点は非常に新規性・独創性が高く、J Am Heart Assoc誌に論文投稿し掲載された。本検討では、13週齢という比較的若齢での表現型比較であったため、血圧以外の心血管リスクの評価は困難であった。現在、心血管代謝系の臓器障害における腸管MR機能の関与を明らかにするため、高脂肪食などの長期負荷モデルを用いた検討、解析を進めている。
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Journal of the American Heart Association
巻: 7 ページ: e008259
10.1161/JAHA.117.008259