この研究の目的は遺伝性尿細管疾患として、偽性副甲状腺機能低下症、Bartter症候群、Gitelman症候群、Liddle症候群、偽性低アルドステロン症の患者末梢血から樹立したiPS細胞から腎尿細管細胞を誘導し機能解析を確立することである。平成28年度には予備実験としてiPS細胞201B7株からマトリゲルでBMP2、BMP7、アクチビン、レチノイン酸にて腎尿細管細胞への分化誘導し、アクアポリン1の免染を行った。21種の尿細管mRNA発現をRT-PCRで評価した。偽性副甲状腺機能低下症患者末梢血単核球に山中4因子をセンダイウイルス導入にてiPS細胞を樹立し、腎尿細管細胞への分化誘導を行い、アクアポリン1の免染で尿細管分化を確認し、さらにアクアポリン1、Nanog、Sox2 mRNAの発現をRT-PCRで評価した。 結果としてiPS細胞201B7株から21日間で腎尿細管細胞へはアクアポリン1陽性尿細管上皮に誘導出来、21種の分化尿細管マーカーmRNAの発現を確認した。臨床的に2名の偽性副甲状腺機能低下症の患者末梢血からiPS細胞を樹立し、24日間でアクアポリン1陽性腎尿細管細胞を確認した。アクアポリン1 mRNAは24日目まで発現増加した。しかし、24日目になってもiPS細胞を含む未分化マーカーNanog、Sox2の発現が残っていた。以上より偽性副甲状腺機能低下症患者からのiPS細胞から腎尿細管細胞への分化誘導が出来たが、未分化iPS細胞の除去により、今後遺伝性腎尿細管疾患の診断法の確立は可能と考えられた。
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