研究実績の概要 |
透析患者において腎性貧血の管理において鉄の投与は主要な治療法のひとつであるが、同時に酸化的ストレスを増強することなどから、動脈硬化を促進する可能性がある。我々は、鉄が血管内皮細胞の石灰化の因子となりうることを見出している。しかしながら、慢性腎不全における石灰化の主要な場は血管中膜細胞(メンケベルグ型動脈硬化)である。鉄負荷が血管内皮細胞に石灰化を炎症ストレスと共に誘導し、マイクロアレイにて様々なサイトカイン等がこのプロセスに関わっていることを見出した。そこで、この鉄負荷が血管中膜細胞の石灰化に影響を与えるかどうか、またどのような機序で血管中膜細胞に石灰化を惹起させるかを明らにした。培養大動脈血管中膜細胞における鉄負荷による石灰化促進を確認できる実験系の確立をまず行った。次にマイクロアレイを用いた鉄負荷による石灰化促進に関与する遺伝子の網羅的解明。マイクロアレイは 鉄負荷・TGFβとそれぞれ単独・共刺激を行い、さらに刺激後day 1とday3を行うことで、より確かなものを拾い出していく。さらに、マイクロアレイで確認された細胞内シグナルの遺伝子レベルあるいはタンパクレベルでの確認。これにより鉄負荷による石灰化促進のメカニズムを明らかにした。また、石灰化に関連する遺伝子群MSX2,OSTEOPONTIINやRANKLなどの遺伝子変化の推移を検討し、細胞内のシグナルについても明らかにした。これらの結果をIron-induced calcification in human aortic vascular smooth muscle cells through interleukin-24 (IL-24), with/without TNF-alpha. Sci Rep.に報告した.。また、国際学会でも報告を行った。
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