パーキンソン病およびその類縁疾患であるパーキンソン症候群は発症頻度の多い神経疾患であり、パーキンソン病のみでも人口10万人あたり100~150人程度発症する。加齢が発症の危険因子であることも知られており、高齢化社会を迎えて、今後患者数はますます増加することが予想される。パーキンソン病以外のパーキンソン症候群においては、その病態機序は未解明な部分が多く、根治療法も見出されていない。パーキンソン症候群のなかで、進行性核上性麻痺は体幹部に強いパーキンソニズム、認知機能障害、垂直方向性の核上性眼球運動障害を主徴とする疾患であり、パーキンソニズムを呈する神経変性疾患のなかでは、パーキンソン病、多系統萎縮症に次いで頻度の高い疾患である。進行性核上性麻痺は前頭葉機能の低下も伴うことから、前頭側頭葉変性症の範疇にも分類されており、認知機能障害の観点からも病態解明が望まれる疾患である。通常は孤発性に発症する疾患であるが、われわれは最近、世界的にみても過去にわずかしか報告のない、家族性に発症する進行性核上性麻痺類似の神経変性疾患家系を経験した。まずはこの家系を対象に、神経病理学的解析と遺伝学的解析を行った。その結果、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析によって、1つの候補遺伝子を見出した。病理学的解析では、淡蒼球、視床下核、黒質の神経変性を伴い、3リピートと4リピートのタウ蛋白の蓄積を伴う新しい神経変性疾患である可能性を見出した。また孤発性進行性核上性麻痺の一部にもこの遺伝子変異が関与する可能性も見出した。これらの知見について報告すべく、現在英文誌に投稿中である。同時に見出した候補遺伝子の翻訳タンパクがバイオマーカーになり得る可能性を考慮し、血漿と髄液を用いELISA測定を試行中である。
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