研究課題/領域番号 |
16K09667
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 喜晴 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 准教授 (30596565)
|
研究分担者 |
赤澤 智宏 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (80291160)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 髄鞘 / オリゴデンドロサイト |
研究実績の概要 |
本態性振戦は、随意運動に伴い震えを生じる発症頻度が高い疾患である。特徴として家族性が多いことが知られており、近年 Teneurin-4(Ten-4)がその関連遺伝子として同定された。一方で、我々が解析したTen-4欠損マウスでは下肢に激しい振戦が見られ、中枢神経系の髄鞘形成が阻害されている。本研究ではTen-4遺伝子の分子機能に注目し、振戦の分子機序解明を目的に解析を行った。 中枢神経系の髄鞘形成において、髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイトと神経軸索またはその他のグリア細胞との相互作用が必須である。また、細胞膜貫通タンパク質であるTen-4の分子機能として細胞間接着が予想されたことから、Ten-4過剰発現細胞や Ten-4細胞外ドメインの組換えタンパク質を用いて細胞接着活性を調べた。その結果、 Ten-4は細胞接着活性を有することがわかった。さらに中枢神経系組織のライセイトと抗Ten-4抗体を用いて免疫沈降を行い、マススペクトロメトリー(ショットガン法)によるTen-4結合タンパク質のスクリーニングを行った結果、65種類の結合タンパク質候補が得られた。その他の分子細胞生物学的な解析から、細胞接着の裏打ちタンパクであるZO-2と細胞骨格制御因子であるsrGAP2がTen-4と分子複合体を形成することが解った。次年度も引き続き解析を行う。これらの結果より、Ten-4の分子機能の一端が明らかとなり、髄鞘形成が関連する振戦のメカニズム解明に繋がることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成28年度は、上述した通り、Ten-4分子機能の解析については、概ね計画通りに研究を進めることができた。しかし、Ten-4欠損マウスの振戦の解析は海外共同研究先の施設上の問題のため、スタートするに至らなかった。また、中枢神経系組織として、本態性振戦で異常が見られる小脳に注目して、Ten-4欠損マウスでの小脳の組織学的解析も進めているが、現在のところ明確な結果が出るに至っていない。現在は、Ten-4分子機能の解析を中心に、小脳組織の解析も同時に解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
上述した通り、初年度である平成28年度の経過から計画している解析項目を順番に進めていく。Ten-4分子機能の解析については、細胞外ドメインの活性と細胞内シグナルが連動することを予想してはいるが、そうはならない可能性も考えられる。その場合は、各々を分けて考える必要があり、状況に合わせて解析項目も修正することになる。その他、小脳組織の解析は引き続き進めて行く。またTen-4欠損マウスの振戦の解析も他の共同研究先も含め、計画通りに進めることができるよう検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度である平成28年度中に、本研究と同様の研究計画内容で、学内での研究支援裁量経費を受給できることとなり、当初計画していたよりも、本研究費の使用額を軽減させることができたためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該年度である平成28年度中に計画通りに進めることができなかった研究項目に、次年度使用額を優先的に費やすようにする。その修正を加えた予算使用計画を立て直し、計画通りに次年度も研究を進める。
|