神経細胞がその恒常性を維持していく為の重要な機能の一つにオートファジーと呼ばれる細胞機能が有る。オートファジーとは、リソソームを利用し自己構成成分を分解するマシナリーであり、神経細胞内に蓄積する異常タンパク質の除去などに関わっている。哺乳動物のオートファジー機構には、Atg5やAtg7等の分子を必要とするオートファジーと、Atg5/Atg7に依存しない新しいタイプのオートファジーが存在する。本研究では、オートファジーの神経変性疾患に対する影響を明らかにすることを目標としている。 昨年度までに、①我々はオートファジーと、Atg5/Atg7に依存しない新しいタイプのオートファジーに関わる遺伝子としてAag4を同定し、マウス脳でKOを作成したら、小脳に異常が生じたことを明らかにした。また②神経変性疾患として、認知症の原因タンパク質のタウに注目してしらべて見ると、タウはNeuro2a細胞でオートファジーで分解され、新規オートファジー誘導化合物Xによって分解が促進されることを明らかにした。 本年度は、①Aag4CKOマウス脳ライセートを作成し、様々な神経変性疾患の原因タンパク質の抗体でタンパク質を検索したところ、認知症で見られるYが限定分解されていることが明らかとなった。②タウを発現するタウマウスに化合物X を投与したところ、治療効果らしきデータが得られた(nが少なく未統計処理)。以上の事により、脳内においてAtg5依存的なオートファジーだけでなく新規オートファジーも重要な働きをしており、さらに治療にも役に立つことが明らかとなった。
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