研究課題/領域番号 |
16K09669
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
春日 健作 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (70547546)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経活動 / アミロイド前駆体蛋白 / アミロイドβ / mRNA |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(以下AD)の早期病態では、アミロイドβ(以下Aβ)の蓄積部位からシナプス投射を受けるニューロンの活動が亢進しており、過剰な神経活動の亢進はその後の認知機能障害の進行と相関する。 本研究は、早期ADの脳内を模倣したin vitroのアッセイ系を新規に構築し、ADの治療開発への研究基盤を確立することが目的である。 本研究では①Aβ依存性の神経活動の亢進を来す条件の検討、②アルツハイマー病の脳内を模倣するin vitroアッセイ系の構築、③神経活動依存性のmRNAの変動の解析および治療候補薬剤の探索を計画している。 H28年度は、マウス神経芽細胞腫由来培養細胞(Neuro2a)、ヒト神経芽細胞腫由来培養細胞(SH-SY5Y)、およびラット大脳皮質初代培養神経細胞をもちいて、培養液へのグルタミン酸添加による神経活動刺激の至適条件の検討を行った。まずグルタミン酸添加前の培養液を、ウシ胎児血清(FBS)を含む従来のものからFBS添加のないものへと交換し、0-16時間後にそれぞれ細胞溶解液を回収し蛋白発現を確認した。これにより培地からFBSを除くと、時間依存性に神経活動の指標であるEGR-1の発現は低下し、一方アミロイド前駆体蛋白(APP)の発現は増加した。このことからFBSを含む細胞培養液下では培養細胞は恒常的に神経活動が亢進しており、またAPPの発現は低下することが明らかとなった。これを踏まえNeuro2a細胞およびSH-SY5Y細胞を、FBSを含まない培養液に交換し4時間培養することで恒常的な神経活動亢進をリセットし、その上でグルタミン酸による神経活動刺激を行った。この条件ではグルタミン酸刺激後にAPPの発現は有意に低下することが明らかとなった。現在、ラット大脳皮質初代培養神経細胞をもちいてグルタミン酸刺激による神経活動依存性にAPP発現減少の再現性を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グルタミン酸を用いた培養細胞の刺激条件の検討に時間を要したため、当初の計画より進捗がやや遅れている。特にマウス神経芽細胞腫由来培養細胞(Neuro2a)およびヒト神経芽細胞腫由来培養細胞(SH-SY5Y)では、腫瘍細胞のためか再現性のある刺激条件を得るために時間を要した。 またラット大脳皮質初代培養神経細胞を用いた検討に関しては、複数回分散に失敗し、原因の特定を行ったところ供給元での搬送時の温度管理が不適切であったためと判明した。供給元に原因があったため特定までに時間を要し、進捗が遅れることとなった。 尚、安定してラット大脳皮質初代培養神経細胞が供給されるようになってからは、Neuro2a細胞やSH-SY5Y細胞と比較し、より再現性の高い結果が得られるようになり、研究が推進している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通りこれまでラット大脳皮質初代培養神経細胞をもちいてグルタミン酸刺激を行ったところ、アミロイド前駆体蛋白(APP)の発現低下を確認しているが、APPのプロセッシングが亢進するためか、APPの産生が低下するためかを確認する必要がある。 前者の場合、プロセッシング亢進に伴いAβ産生が亢進しているとすれば、in vivoでの既報と矛盾せず、研究計画の通りin vitroでのアッセイ系の構築を進める。 一方、後者の場合、神経活動依存性にAPPの産生が低下するというのは新しい知見であり、研究計画を変更しAβ非依存性の神経活動亢進に伴うmRNAの変動解析を行い、APP発現低下とあわせアルツハイマー病病態への関与を検討する。
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