研究課題/領域番号 |
16K09670
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
他田 正義 新潟大学, 脳研究所, 助教 (10467079)
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研究分担者 |
小野寺 理 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20303167)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊髄小脳変性症 / ポリグルタミン病 / 小脳性運動失調 / 定量評価法 / モデル線虫 |
研究実績の概要 |
1. 重合体形成阻害を分子標的としたモデル線虫による薬剤スクリーニング:重合体形成を阻害した化合物の中から既に臨床使用されている薬剤トップ25を対象に、PolyQ病モデル線虫を用いて封入体形成阻害効果を検討した。その結果、7剤 (28%) の薬剤が封入体形成阻害効果を示した。 2. マチャド・ジョセフ病患者由来線維芽細胞からのiPS細胞の樹立:SCA3患者2名の皮膚組織を採取し,熊本大学発生医学研究所(江良研究室)の協力を得て現在iPS細胞を樹立中である. 3. 小脳性運動失調の新たな定量評価法の開発(システム開発・臨床研究):iPad を用いた上肢運動機能評価システム iPatax (iPad Application for Evaluating Ataxia) を開発した。健常者および小脳失調症患者のべ計200例を対象とした解析で、視標追跡課題における速度の変動係数が小脳性運動失調の臨床重症度SARA総点高い正の相関を示すこと、速度の変動係数は運動学習により課題遂行の後半に低下し、その学習効率は健常群に比して失調症患者群で低下することを明らかにした。また、Kinectセンサーを用いた3次元歩行解析システムを開発した。 4. 患者に対する治療介入試験:脊髄小脳変性症患者に対する酒石酸バレニクリンの治療効果の検討:脊髄小脳変性症患者29例を対象として、禁煙薬であるvarenicline (Champix, Pfizer) の有効性および安全性を検討した。8週間の服用で嘔気を7例 (24.1%) に認めたが、重篤な副作用は認めなかった。Varenicline 高用量群(2mg/日)と低用量群(0.5mg/日)の2群比較において、8週間の服用により、高用量群では低用量群に比して臨床評価スケールSARAの歩行項目が有意に改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 重合体形成阻害を分子標的としたモデル線虫による薬剤スクリーニング:概ね順調に進展している。 (2) マチャド・ジョセフ病患者由来線維芽細胞からのiPS細胞の樹立:SCA3患者2名の皮膚組織を採取したが、iPs細胞樹立は現時点でうまく進んでいない。 (3) 小脳性運動失調の新たな定量評価法の開発(システム開発・臨床研究):iPad を用いた上肢運動機能評価システム iPatax の開発とデータ収集・解析、および Kinectセンサーを用いた3次元歩行解析システムの開発とデータ収集・解析については概ね順調に進展している。 (4) 患者に対する治療介入試験:脊髄小脳変性症患者に対する酒石酸バレニクリンの治療効果の検討については、試験は順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 重合体形成阻害を分子標的としたモデル線虫による薬剤スクリーニング:封入体形成阻害効果を示した7剤の薬剤について、線虫の生存率や運動能に対する効果を検討する。 (2) マチャド・ジョセフ病患者由来線維芽細胞からのiPS細胞の樹立:他の患者からの皮膚組織採取、iPS細胞樹立を検討する。 (3) 小脳性運動失調の新たな定量評価法の開発(システム開発・臨床研究):より多数例でのデータ収集、解析を進める。脊髄小脳変性症以外の疾患(パーキンソン病や脳梗塞など)との比較検討も行う。 (4) 患者に対する治療介入試験:酒石酸バレ二クリン以外の他の薬剤の臨床試験も準備中であ理、H29年度中に開始予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費および旅費の支出が当初の見込みよりも低く抑えられたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度実施の研究を引き続き継続する必要があるため、無駄のないように注意しながら、全ての研究計画の遂行に必要な経費に充てたい。
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