研究課題/領域番号 |
16K09671
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
遠藤 史人 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (10713307)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウス(SOD1マウス)において病原タンパク質である変異SOD1をアストロサイト特異的にノックアウトするとALSの進行が抑制されるが(Yamanaka, 2008)、このマウスでは運動神経の病原タンパク質の蓄積が抑制されることを見出した。本研究ではまず、アストロサイト由来の細胞外小胞(EV)が病原タンパク質の伝播が寄与することを明らかにすることを目指す。今年度は、SOD1-G93Aマウスの脊髄組織の活性化アストロサイトにおいて、EV関連タンパク質の発現上昇や、p62が陽性となる封入体が認められることを見出した。さらに、in vitroの検討では、オートファジー障害によりアストロサイトにおける変異SOD1タンパク質陽性EVの産生が促進され、AcGFP融合変異SOD1を発現させたアストロサイト様細胞由来のエクソソームを運動神経様細胞へ処理すると一部の神経細胞が数時間でAcGFP陽性となることから、変異SOD1タンパク質の伝播が生じると考えられた。次年度以降、SOD1マウスの脊髄組織におけるEVの解析、アストロサイトから運動神経への変異SOD1タンパク質の伝播の解析とその阻害についてのin vivoでの検討を開始する。 次に、本研究では、アストロサイトの神経毒性機序の解明進行の早い通常のSOD1マウスとアストロサイト特異的に変異SOD1を除去した進行の緩やかなSOD1マウスの脊髄からアストロサイトを単離し、抽出した遺伝子を用いて網羅的遺伝子解析を行い、ALSの進行に関与するアストロサイト由来因子・分子カスケードを同定することを目指すが、今年度はマウス脊髄組織からアストロサイトを単離するmagnetic sortingの技術を確立した。次年度以降、SOD1マウス脊髄由来のアストロサイトから遺伝子を抽出し、網羅的遺伝子解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、SOD1マウス組織からのアストロサイトの単離および網羅的遺伝子解析を先行して行う予定であったが、アストロサイト由来変異SOD1 の神経細胞への伝播の病態に細胞外小胞が関与することを示唆する有望な結果が得られたため、今年度は前倒しして、こちらの実験課題を優先して行った。
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今後の研究の推進方策 |
SOD1マウス組織からのアストロサイトの単離に関しては、アストロサイト特異的にEGFPを発現するALDH1L1-EGFP マウスとSOD1マウスとの交配によりアストロサイト特異的にEGFP を発現させ、セルソーターを用いてアストロサイトを単離する方法を予定していたが、当研究室で磁気細胞分離法を用いることにより簡便に組織からアストロサイトを単離する方法を確立したことから、次年度はこの方法により実験課題を進めることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、ALSの進行速度の異なるSOD1マウスの脊髄組織からアストロサイトを単離し、遺伝子発現解析を行う予定である。また、アストロサイト由来細胞外小胞の運動神経へのin vitroでの毒性評価、SOD1マウス組織を用いた細胞外小胞の解析等を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、アストロサイト由来因子・分子カスケードを同定するため、マウス組織からアストロサイトを単離する予定であるが、必要な磁気ビーズを含む関連試薬が必要である。また、細胞外小胞を分離するための限外濾過フィルター類、運動神経培養のための細胞培養用培地類、さらに遺伝子発現解析用酵素類、タンパク質発現解析用抗体等、その他各種試薬を購入予定である。また、国内外の学会に参加し、積極的に研究発表したいと考えている。
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