研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウス(SOD1マウス)において病原タンパク質である変異SOD1をアストロサイト特異的にノックアウトするとALSの進行が抑制されるが(Yamanaka, 2008)、このマウスの運動神経では変異SOD1の蓄積が抑制されることを見出した。本研究では、アストロサイト由来の細胞外小胞(EV)が病原タンパク質の伝播に寄与するかどうかを検証することを目的とする。前年度は、SOD1-G93Aマウスの脊髄組織の活性化アストロサイトにおいて、エクソソーム関連タンパク質の発現上昇や、p62が陽性となる封入体が認められることを見出した。さらに、オートファジー障害により初代培養アストロサイトにおけるエクソソームの産生が促進され、さらに回収したエクソソームは変異SOD1タンパク質が陽性であったことから、アストロサイトにおけるオートファジー障害とエクソソーム産生亢進およびそれに伴う病原タンパク質の放出が密接に関連することを明らかにした。今年度は、AcGFP融合変異SOD1を発現させたアストロサイト様細胞であるT98G細胞由来のエクソソームを初代培養運動神経へ処理すると一部の神経細胞がAcGFP陽性となり、運動神経様細胞であるNSC-34細胞へ処理するとアポトーシスが誘導されたことから、病原タンパク質を含むアストロサイト由来のエクソソームは運動神経への病原タンパク質の伝播に寄与し、神経傷害性を発揮することを見出した。本研究成果より、アストロサイト由来のエクソソームがALSの進行を抑制する新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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