研究課題
孤発性封入体筋炎(sIBM)は、高齢者に頻発する炎症性筋疾患である。本疾患は、炎症性筋疾患に分類されると同時に筋変性疾患の性質も有しており、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患と共通する病態の関与が予想される。本研究では、本患者の骨格筋形質内にTDP-43が異常沈着することに着目し、骨格筋特異的TDP-43発現マウスを作製し、sIBM患者に類似の筋病理学的変化や運動機能の低下の有無を評価するとともに、本マウスの筋変性の病態メカニズムを解明することを目的とする。CK8プロモーター下に野生型TDP-43を発現するトランスジェニックマウスを作製すると、血清中筋逸脱酵素の上昇と、筋線維の大小不同、TDP-43の筋線維内凝集、Tubular aggregateなどの筋病理学的変化を認めた。また変性筋線維を摘出し、網羅的プロテオミクス解析を行うと、カルシウム恒常性を制御するSR/ER局在蛋白とともにNT5C1Aが高頻度に検出された。電子顕微鏡による観察では、変性筋内に異常な自己貪食空胞と傷害されたミトコンドリアを認めた。また変性筋を用いた生化学的解析より、断片化TDP-43はミトコンドリア内に局在する可能性が示された。しかし本マウスではsIBMに特徴的な病理変化は見出せなかった。TDP-43を骨格筋内に過剰発現することで、カルシウムの恒常性が破綻し筋変性をもたらすことから、骨格筋内のTDP-43凝集が一次的に筋毒性を発揮することを明らかにした。またNT5C1Aは、近年sIBM患者血清中に見出されている自己抗体の標的蛋白であり、TDP-43とNT5C1Aは相互作用を示し、何らかの機序で抗原提示される可能性が示された。さらに断片化したTDP-43はミトコンドリア内部に局在することから、ミトコンドリア機能障害が本マウスにおける筋変性に関与することも示唆された。
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