研究課題
パーキンソン病はレヴィ小体と呼ばれる凝集体が出現することが特徴とされている。この凝集体はα-シヌクレインが主な構成蛋白である。すなわち、α- シヌクレインの凝集が本疾患の主な病態として考えられている。最近、ホスホリパーゼであるiPLA2βをコードするPLA2G6遺伝子の変異がLewy小体を伴う神経変性疾患に関連することが示されており、本研究ではリン脂質代謝異常とα-シヌクレインの関連について検討を行っている。具体的な方法としてPLA2G6遺伝子改変ショウジョウバエモデルを用いて、行動異常の検討、組織学的解析によるカテコラミン神経脱落の検討、α-シヌクレイン凝集に関する検討を行っている。本年度までにPLA2G6ノックアウトショウジョウバエは生存率の低下、睡眠リズム障害、外的刺激（bung sensitivity）による運動回復の障害を認めることを明らかにした。また、脂質解析を行ったところ、アシル基がより短くなっていることが明らかになった。ショウジョウバエの睡眠障害はカテコラミン神経細胞の障害に関連すると言われており、実際に組織学的検討でも脱落を確認した。外的刺激からの回復障害についてはシナプス終末における放出能の異常に関連する可能性を考え、電子顕微鏡を用いて検討したところ、異常を認めていた。これらの症状は脂質補充しアシル基を正常化することで回復した。α-シヌクレインの過剰発現ショウジョウバエと交配させ検討したところ、PLA2G6をノックアウトするとα-シヌクレインの凝集が亢進することが判明した。リポソームを用いた解析で、ショウジョウバエモデルで認められた脂質変化の組成によりα-シヌクレインはより凝集しやすいことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標である、PLA2G6ショウジョウバエモデルの解析により脂質異常によるカテコラミン神経細胞脱落とそれにより引き起こされる行動異常を明らかにした。さらに、この変化は脂質の構成障害であり、それによりα-シヌクレインの凝集が引き起こされることが明らかになった。今後ヒトにおける検討が必要であるが、PARK14患者から得られたiPS細胞の作成を着手している。そのため、本研究の目標は概ね順調に進展している。
今後は、現在のデータをまとめ論文投稿準備中である。今年度中に論文出版を目指す。また、ヒトiPS細胞の樹立を開始して、ショウジョウバエモデルの知見がヒトの病態に関与する可能性についてさらに検討することを予定している。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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