パーキンソン病(PD)は黒質ドパミン神経細胞の変性脱落およびレヴィ小体の出現が特徴である。この凝集体のおもな構成タンパクはα-シヌクレイン(AS)である。すなわちAS凝集メカニズムの解明が本疾患の発症メカニズムの理解に直結する。過去の研究で、ASは脂質二重膜との結合能が凝集に関連することが報告されており、実際にゴーシェ病などの脂質代謝酵素異常がレヴィ小体を有するPDの原因になることが知られている。その中で、本研究ではリン脂質代謝酵素異常が原因で発症する家族性PD;PARK14に注目をして検討を行った。この疾患の原因タンパクはリン脂質のアシル基を切断しリゾリン脂質へ代謝する酵素であるPLA2G6であり、ノックアウトショウジョウバエモデルを作成して検討を行った。また、C19orf72タンパクの障害で生じる神経変性疾患はPARK14と酷似している。ハエモデルも同様でありPLA2G6とC19orf72の機能は一つのカスケードを形成している可能性があり検討を行った。 PLA2G6ノックアウトハエは運動障害、睡眠障害、生存期間が短くなり、ドパミン神経細胞の脱落、ASの凝集、リン脂質アシル基の短鎖化を認め、シナプス小胞の形態が変化することを見出した。これらの機能障害はリノール酸を補充することで改善する事を明らかにした。C19orf72はミトコンドリアとERのコンタクトサイトであるMAMに作用をしており、機能障害によりPLA2G6と同様の機能障害を認めた。リポソームを用いたin vitro検討でPLA2G6の機能障害による脂質構成の変化がASの膜への結合を低下させた。結合低下の理由としてpacking defectが影響している可能性を示した。 結果をまとめており、現在論文リバイス中である(Mori A et al PNAS in revision)。
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