研究課題/領域番号 |
16K09679
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
井下 強 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20601206)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 神経機能 / シナプス機能制御 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)原因遺伝子Vps35の機能欠失ハエモデルを用い、神経機能やシナプスの形態学的解析を行い、Vps35が別のPD原因遺伝子LRRK2と協働してシナプス小胞動態を制御していることを確認した。Vps35機能欠失ハエでは、電気生理学的手法や電子顕微鏡を用いたシナプスの超微細構造の観察から、シナプス小胞のリサイクリングが減衰し、神経活動が低下していることが示された。その結果、ドーパミン神経の脱落や睡眠行動異常が生じていた。こうした異常は、Vps35の野生型を発現させることで回復されたが、病原性変異体の発現では回復効果が見られなかったことから、病原性変異は機能欠失変異と考えられる。また、LRRK2を過剰発現させることでも同様の回復効果が見られたことから、Vps35とLRRK2が同じシナプス小胞リサイクリング制御を担い、リサイクリングを亢進させることでVps35の機能欠失による異常表現型の回復が可能であることが示唆された。さらに、シナプス小胞動態制御に関わるRab5, Rab11の過剰発現も回復効果を示したこと、Rab5, Rab11とVps35が近接した場所に局在していることから、Vps35とLRRK2, Rab5, Rab11の相互作用によりシナプス小胞動態制御が行われていることが確認できた。これらの結果から、シナプス小胞リサイクリング機構を制御し、正常化させることがVps35変異による病態に対し、回復/治療効果を持つ可能性が示唆された。PD関連遺伝子には、Vps35やLRRK2以外にもシナプス小胞動態制御に関わることが推察されているSynaptojaninやAuxilinなどが含まれている。我々の研究結果とこうした知見から、PDの治療におけるシナプス小胞動態正常化の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vps35とLRRK2の協働によるシナプス小胞動態制御に関して、2017年5月にHuman Molecular Geneticsにて論文を発表した(Vps35 in cooperation with LRRK2 regulates synaptic vesicle endocytosis through the endosomal pathway in Drosophila. 2017)。現在は、この研究を進展させるため、他のパーキンソン病関連遺伝子とVps35, LRRK2の相関を電気生理学的手法と超微細構造の観察、生体イメージングを組み合わせて進めており、特定の遺伝子の組み合わせが、シナプスにおける単独の機能欠失が示す異常表現型を増悪させることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
既に、シナプスの機能・形態制御においてVps35やLRRK2と相関のあるパーキンソン病(PD)関連遺伝子を特定しており、その異常表現型の詳細な解析を進めている。特に、PDにおいては、α-シヌクレインの蓄積が発症と相関を持つことから、α-シヌクレインの挙動が、これら遺伝子によりどのような制御を受けているかを解析予定である。ハエは内在性のα-シヌクレインを持たないため、PD遺伝子欠失ハエモデルに対し、α-シヌクレインを前シナプスから取り込ませ、その後の挙動を追跡することでα-シヌクレイン動態制御に関わるPD遺伝子を特定し、治療標的分子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
Vps35とLRRK2の相関を解析した研究の論文化が終了し、その結果を受けて他の遺伝子との相関解析を進めているが、実験手法をこれまでの研究で確立しているため、機器や消耗品の支出が抑えられたため、次年度使用額が生じた。今年度は、新たな実験手法の導入と研究発表や論文化を行うため、物品費や旅費、論文化費用として使用する。
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