研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)発症機序解明と的確な治療標的探索のため、小胞輸送に関わるPD関連遺伝子間のネットワーク構築と、それら遺伝子の機能欠失が示す共通の表現型同定を進めている。すでに、PD原因遺伝子LRRK2とVps35の協働によるシナプス小胞動態制御機構を解明しているが、当該年度は、LRRK2とAuxilin, INPP5Fの機能欠失を組み合わせることで、シナプス小胞動態制御に関わるsmall GTPase, Arl8の局在異常が生じることを明らかにした。Arl8は、シナプス形成やシナプス小胞前駆体の輸送に関わることが示唆されており、神経機能制御における重要な分子と考えられる。LRRK2の機能欠失は、シナプス終末でのArl8の蓄積を亢進しており、LRRK2の機能欠失が示す神経機能異常との関連が推察される。こうしたArl8の蓄積は、AuxilinやINPP5Fの機能欠失モデルでは見られないが、LRRK2の機能欠失とAuxilin, INP5Fいずれかの機能欠失を組み合わせることでLRRK2の機能欠失単独に比べ増加する。このことから、3個のPD遺伝子、LRRK2, Auxilin, INPP5Fが共通してArl8の動態制御を担っていることが示唆されることから、PD遺伝子によるArl8の動態制御機構解明は、PD発症機序解明と治療標的特定に貢献すると考えられる。これを補強するデータとして、PD発症に強く関連するα-シヌクレインが、Arl8蓄積シナプスにおいて共局在していることを明らかにしている。さらに、ヒト剖検脳においても、Arl8とα-シヌクレインの共局在が観察できることも、Arl8の動態がPD発症に関わることを示唆している。現在、これらの知見について論文執筆中である。
|