研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)病態解明のため、PD関連遺伝子間の相互作用解析を行い、カギとなる遺伝子の特定と共通した分子機構の解明を行った。 前年度までに、PD原因遺伝子LRRK2と他のPD関連遺伝子AuxilinやINPP5Fとの遺伝的相関を解析し、シナプスにおけるsmall GTPase, Arl8の蓄積をまねくことを明らかにした。本年度は、Arl8蓄積に関わり、LRRK2により制御を受ける分子機構の特定を試みた。Arl8のシナプスにおける蓄積は、LRRK2とAuxilin, INPP5Fの機能低下の組み合わせだけでなく、LRRK2の病原性変異体の発現によっても生じており、Arl8蓄積シナプスにおいてはLRRK2病原性変異体の共局在が観察された。Arl8蓄積の原因として考えられる、Arl8の軸索輸送異常やシナプスにおけるArl8分解異常に対するLRRK2の影響を解析した結果、LRRK2欠失により順行性のArl8輸送の亢進が生じた。また、LRRK2により活性制御を受けるsmall GTPase, Rab3や、シナプス小胞と共に軸索輸送されリソソームの成熟過程で働くspinsterがArl8蓄積シナプスで蓄積することも明らかになり、シナプス小胞の軸索輸送やシナプスにおけるシナプス小胞動態制御において、LRRK2, Arl8, Rab3, spinsterの協働が示唆された。さらに、PD病態に強くかかわるαシヌクレインの取り込み実験から、Arl8蓄積シナプスにおけるαシヌクレインの蓄積を確認した。さらに、PD患者剖検脳のPDの病理的特徴であるαシヌクレインの凝集体であるレヴィ小体において、Arl8bの蓄積も観察しており、PDの病態解明において、Arl8動態解析の重要性が示唆された。
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