研究課題/領域番号 |
16K09682
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
松村 喜一郎 帝京大学, 医学部, 教授 (50260922)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (00585028)
萩原 宏毅 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (80276732)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジストログリカン / 糖鎖修飾 / 蛋白質プロセッシング / 筋ジストロフィー |
研究実績の概要 |
ジストログリカン (DG)は細胞外に存在する膜表在性蛋白質のα-ジストログリカン (α-DG)と膜貫通型蛋白質であるβ-ジストログリカン (β-DG)から成り、α-DGは細胞外でラミニンと、β-DGは細胞内でジストロフィンと結合している。このなかでα-DGとラミニンとの結合はα-DGの糖鎖構造を介して行われ、この糖鎖修飾に関わる糖転移酵素群の変異により筋ジストロフィーや脳奇形、眼球異常などを呈するα-ジストログリカノパチーが発症する。本邦において特異的に頻度が高い福山型先天性筋ジストロフィーはこの代表的な疾患である。一方、α-DG のもうひとつの翻訳後修飾にN 末端ドメイン(α-DG-N)のプロセッシングがある。我々はα-DG-Nがプロプロテイン・コンバターゼよって切断され細胞外へ分泌されることを報告してきたが、このα-DG-Nプロセッシングの意義は不明のままである。本研究はこのα-DG-Nの生理的機能を明らかにし、α-DG-Nの神経筋疾患における病態への関与を検討することを目的としている。我々はこれまでの研究でα-DG-Nを過剰発現するトランスジェニックマウス(α-DG-N Tgマウス)およびα-DG-Nと結合してα-DGの糖鎖修飾を行う糖転移酵素LARGEのトランスジェニックマウス(LARGE Tgマウス)を作出した。本年度は免疫蛍光抗体法を用いてこれらマウスの脳の解析を行った。その結果LARGE Tgマウスにおいて小脳分子層の形成不全、プルキンエ細胞の脱落などの異常所見を認め、LARGEが小脳神経細胞の発生に影響を及ぼしている可能性が示された。現在α-DG-N Tgマウス脳の解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度には培養細胞を用いたin vitro におけるα-DG-Nの機能解析を行い、トランスジェニックマウスの脳の解析は次年度以降に行う予定であったが順序を入れ替えた。しかしマウスの脳の解析も興味深い一定の結果が出つつあるものの、まだ完了してはいない。さらに予定されていたてモーリス水迷路試験などを用いた空間認知や学習能力などの検討も行っていないので、やや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は脳や骨格筋における形態学的な解析を中心に行う。光学顕微鏡、電子顕微鏡や免疫蛍光抗体法により脳や骨格筋における形態変化の有無を観察する。さらに必要に応じて多光子励起顕微鏡を用いた深部イメージングを行う。この方法によりマウスの大脳皮質神経細胞の神経軸索や樹状突起の全体像を描出することが可能となり、軸索や突起の伸展に何らかの変化が生じた際の検出が容易になる。また骨格筋のパイロットスタディーにおいては生理的な状態では明らかな変化が見いだせなかったので、変性・壊死などの負荷を加えた状況において筋再生に変化が生じないかどうか検討する。すなわち急性の負荷としてカルジオトキシンの筋肉内注射により筋壊死を誘発して、そこからの再生の状況を観察する。また慢性の負荷としてDuchenne 型筋ジストロフィーのモデル動物であるmdx マウスとの交配を行い、骨格筋の変性・再生のサイクルに何らかの変化が生じないか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養用ウシ胎児血清を購入する予定であったが、研究の順序を培養細胞を用いたin vitro におけるα-DG-Nの機能解析から、トランスジェニックマウスの脳の解析に入れ替えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に細胞培養用ウシ胎児血清を購入する。
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