研究課題
ジストログリカン (DG)は細胞外に存在する膜表在性蛋白質のα-ジストログリカン (α-DG)と膜貫通型蛋白質であるβ-ジストログリカン (β-DG)から成り、α-DGは細胞外でラミニンと、β-DGは細胞内でジストロフィンと結合している。α-DGとラミニンとの結合はα-DGの糖鎖構造を介して行われ、この糖鎖修飾に関わる糖転移酵素群の変異により脳奇形や眼球異常を伴う筋ジストロフィー、α-ジストログリカノパチーが発症する。一方、α-DG のもうひとつの翻訳後修飾にN 末端ドメイン(α-DG-N)のプロセッシングがあるが、この意義は不明のままである。本研究はこのα-DG-Nの生理的機能を明らかにし、α-DG-Nの疾患への関与を検討することを目的として行われた。先行研究においてα-DG-Nが培養神経細胞の軸索進展作用があるとの報告があることから、研究期間中には主としてα-DG-Nトランスジェニックマウス脳の解析を行ってきた。しかしながら同マウスの大脳や小脳の細胞構築に際立った形態学的異常は認められなかった。その一方で最終年度には思いがけない疾患との関連性が明らかとなった。それはインフルエンザ感染症である。すなわちα-DG-N欠損マウスの肺にA型インフルエンザウイルスを感染させるとコントロールと比べてウイルスのタイターが有意に上昇した。またマウスに対して経鼻的にα-DG-Nを投与すると逆にウイルスのタイターが有意に低下した。これらの結果からα-DG-NにはA型インフルエンザ感染症に対する抑制効果があることが示された。
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Proc Natl Acad Sci USA
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doi/10.1073/pnas.1904493116