【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新規病因遺伝子産物ErbB4が運動神経細胞(MN)死をもたらすメカニズムを解明する。【方法】①Neuro2A細胞に野生型・変異型ErbB4を遺伝子導入した一過性発現系において、細胞内局在を分析する。MTTアッセイにより細胞生存率を評価する。②マウス大脳皮質由来初代培養神経細胞に対して野生型・変異型ErbB4の遺伝子導入を行い、突起伸長、細胞の生存について比較する。③タモキシフェン依存性運動神経細胞特異的ErbB4コンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作成し、ErbB4の発現喪失が運動神経細胞死をもたらすかどうかについて、in vivoで検証する。【結果】①Neuro2A細胞を用いた一過性発現系 野生型・変異型ErbB4で細胞内局在に差異が認められた。また、変異型は野生型と比較して有意に生存率が低下していた。②初代培養神経細胞において、野生型・変異型で突起伸長・細胞生存率に差異が認められた。③Erbb4 flox/flox・129-Chattm1(cre/ERT)Nat/Jの掛け合わせによりcKOマウスの作製を行い、F1世代において予備的な検討を行った。生後8週でタモキシフェンを投与し、MNにおけるErbB4の発現喪失を免疫組織化学的に確認した。投与後4ヶ月後より、Clasping reflexの異常、野生型と比較して体重減少、hunchback posture、後肢のgrip strengthの低下が認められた。さらにcKOマウスのコンジェニック化を進め、F8世代に到達した。【考察】培養細胞系で野生型と変異型の局在・細胞生存の差異が認められ、本変異の病原性を支持する結果が得られた。また、cKOマウスの作製により、ErbB4の喪失がMN死をもたらす仮説を支持する結果が得られた。以上期間内に目標は達成した。
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