研究課題
私たちは、中枢神経系の神経細胞以外の細胞=グリア細胞(アストログリア、オリゴデンドログリア、ミクログリア)が中枢神経炎症性疾患に病態機序に及ぼす影響を解析している。平成29年度は、アストログリアやオリゴデンドログリアのギャップ結合分子コネキシンが多発性硬化症モデルマウス(=EAE)の病態に及ぼす影響を検討した。その結果、アストログリア特異的Cx43欠損マウスではEAEが軽症化し、同マウスのミクログリアが抗炎症性に形質変換していることを突き止めた。現在、アストログリアのCx43欠損がミクログリアに与える影響を検証中。また、オリゴデンドログリア特異的Cx47欠損マウスでは逆にEAEが悪化した。同マウスではグリア細胞が神経障害性に活性化している可能性が強く示唆され、現在解析中である。ミクログリアはEAEモデルの慢性期に活性化することが知られている。私たちはその活性化を抑制することで慢性期の症状軽減ができないか検討し、イグラチモドという抗リウマチ薬が有効であることを突き止めた。同薬剤をマウスに予防的投与するとEAEが発症せず、さらにEAEの症状がピークのときに治療的投与を開始してもその重症度が軽減されることを見出した。本研究成果はScientific Reportsに報告した(Li, Yamasaki et al., Sci Rep 2018)。この結果はグリア炎症がEAEの中枢神経障害に強く関わっていることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
本研究で得られたオリゴデンドログリア特異的Cx47欠損マウスは世界初の慢性進行性多発性硬化症モデルマウスであり、そのメカニズム解明は新規治療法の開発につながる可能性がある。またアストログリア特異的Cx43欠損マウスについても多発性硬化症の新たな疾患機序を示唆する重要なモデルである。どちらの動物モデルもこれまでなかった世界初のモデルで、今後の研究が多発性硬化症のメカニズムについて新たな知見をもたらすものと期待される。
今回得られた貴重な動物モデルの病態解明、治療法開発に引き続き注力する。現在は分子メカニズムの解析を主に行っている。
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SCIENTIFIC REPORTS
巻: 8 ページ: 1933
10.1038/s41598-018-20390-5