研究課題
多発性硬化症(MS)は脱髄性神経疾患の代表的な疾患で、30歳台女性に好発し、発症当初は再発寛解を繰り返すが、発症後10年で二次進行形に移行する。再発寛解期の再発予防薬は開発されているが、二次進行期についてはメカニズムが不明なため治療薬がほとんどない。私達は、中枢神経系におけるグリア細胞機能異常を介した脱髄性神経疾患のメカニズム解析および新規治療法開発のため、アストログリアのギャップ結合蛋白コネキシン(Cx)30やCx43を細胞特異的に発現低下させた遺伝子改変マウスに実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導し、症状の経過を追った。EAEはMSの動物モデルとして認知されている。その結果、Cx30欠損マウスではEAEの急性期症状には変化が見られなかったが、慢性期症状が軽減した。マウス脊髄および単離したミクログリアの発現遺伝子解析では、脊髄内ではアストログリアが神経保護的に活性化し、ミクログリアも保護的活性化を呈していることが明らかとなった。これらの結果は、これまで不明であったMS患者における慢性期における症状悪化を反映していると思われた。Cx43欠損マウスにおいても、やはり急性期症状は不変であったが、慢性期症状の軽減を認めた。これらの結果は、アストログリアのギャップ結合が疾患メカニズムとして重要で、これらの機能修飾による慢性期MS患者の新規治療法開発につながると考えられた。ギャップ結合阻害薬としては、漢方薬などによく使われる甘草(リコリス)の誘導体であるINI0602が試薬として市販されており、現在その効果について検討を行っている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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