研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)の病態生理において、amyloid β (Aβ)オリゴマーこそが脳内の様々な病的変化に先行してシナプス機能障害ひいては認知機能障害を引き起こす直接的原因であり、その根治にあたってAβオリゴマーは最も有力な治療標的分子と考えられている。申請者らは、AD モデルマウス脳内の神経細胞内外 Aβ オリゴマー蓄積抑制とシナプス蛋白保護効果・記憶障害発症予防効果を有し先制医療にも応用可能なモノクローナル抗体(日本特願 2008-201058, USP 9085614, USP 9090680, Mol Neurodegener 2011, J Neurosci Res 2011, J Gerontol Geriat Res 2012)と、いったん発症した記憶障害の回復と神経原線維変化形成阻止を可能とする根本的治療用抗体(日本特願 2008-201058, USP 9085614, USP 9090680, Life Sci 2012, Biomed Res Int 2013)開発に成功している。ところがこれらの抗体の臨床応用は特にコスト面において非現実的で、能動的免疫を用いた先制的ワクチン療法の開発が急務である。本課題では、上記の抗Aβオリゴマー抗体を動物に免疫し、Aβオリゴマーの立体構造を模倣する抗イディオタイプ抗体の作製し、それらがAβオリゴマー類似のアナログとして、能動的免疫療法に応用できるかを検討した。これまで、in vitroでの親抗体に対する中和活性を持つ1種類の抗イディオタイプ抗体を得ており、今回さらに強力で有効な抗イディオタイプ抗体の産生を目指した。Aβオリゴマー抗体の免疫回数、免疫寛容の導入など、様々な検討を行ったが、安定した中和活性を有する抗イディオタイプ抗体産生ハイブリドーマ系の確立には未だ至っておらず、実験条件の検討を継続中である。
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