研究課題
神経細胞の電位依存性カリウムチャネル(VGKC抗体)に対する自己抗体は、末梢神経の興奮性亢進を引き起こし、筋けいれん、手指の開排制限を主訴とするアイザックス症候群(IS)の原因自己抗体である。また、この抗VGKC抗体は、末梢神経系の疾患であるISのみならず、筋けいれんに多彩な自律神経機能障害や重度の不眠、複雑な夜間行動異常、幻視、記銘力霜害など中枢神経症状を特徴とするモルヴァン症候群や自己免疫性辺縁系脳炎の一部に関与する。さらに従来、αデンドロトキシンを用いたRIA法で測定していた自己抗体は、VGKCそのもののみならず、leucinerich glioma inactivated 1 protein (LGI1)、contactin-associated protein 2(Caspr2)、およびcontactin 2を標的とするポリクローナルな抗体であることが明らかになった。この結果を踏まえ、研究代表者らは、効率よく、網羅的に自己抗体を検出する方法として、ラット海馬神経細胞との反応性でスクリーニング後、live cellのまま免疫沈降を行い、主要抗原について直接バンドを切り取り質量分析で抗原を確定させる手法を確立した。また疫学的研究の結果を踏まえ、ISの診断基準を作成し、ISの難病指定に寄与した。ISは、いままで、系統的な研究がされていなかったが、今回、同疾患の臨床徴候とLGI1、Capr-2などの自己抗体との関連について解析した。特に、疼痛、自律神経および中枢神経障害との関連について検討した。IS症候群の臨床症状は多岐にわたり、不均一であり、自己抗体との関連については限定的であったが、Caspr-2抗体とLGI抗体を共に有する場合は、より重篤でモルヴァン症候群の臨床像をとることが明らかになった。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
JAMA Neurol
巻: 75 ページ: 1519-1527
10.1001/jamaneurol.2018.2681.