研究課題
HTLV-1の感染者の一部に発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM)は、未だ有効な治療法がない難治性疾患である。その主病態は、HTLV-1感染細胞に起因した脊髄の慢性炎症による神経組織傷害と考えられているが、未だ不明な点が多い。 我々の臨床的解析からHAMの脊髄病変部では、浸潤した感染T細胞より産生されるIFNγがアストロサイトからCXCR3のリガンドであるCXCL10産生を刺激し、その脊髄中に高発現したCXCL10はCXCR3陽性炎症細胞の脊髄への遊走を促し、浸潤したそれらの細胞がIFNγを産生して更なるアストロサイトからのCXCL10産生を刺激するという、IFNγ-CXCL10-CXCR3炎症のポジティブフィードバックループを形成することが炎症の慢性化の主軸となり、HAMの脊髄病巣の形成・維持に重要な役割を果たしているという仮説を提唱した。本研究では、HTLV-1感染に起因した炎症ループを再現し本仮説を検証することにより、HAM病態の形成・維持機構を明らかにすることを目的とする。樹立したアストロサイト特異的CXCL10発現多重免疫不全マウス(NSG/GFAP-CXCL10マウス)へのHAM-PBMC移植においてはHAM様の変化が認められなかったことから、平成30年度は、HAM-PBMC移植NSG/GFAP-CXCL10マウスへの実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘導することで、HAMで見られる炎症ループを誘導しそれに伴う病態の悪性化を予想し検討をおこなった。行動・形態異常、体重変化、末梢血および中枢神経におけるHTLV-1プロウイルス量変化とヒトCXCL10濃度変化について解析を行った結果、中枢神経におけるHTLV-1プロウイルス量が野生型に比べNSG/GFAP-CXCL10マウスにおいて上昇が認められたが、その他の解析項目においては目立った変化は認められなかった。
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Front Microbiol
巻: 9 ページ: 1651
10.3389/fmicb.2018.01651
神経内科
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http://nanchiken.jp/