研究課題
タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス (TMEV) 感染による脱随疾患モデルは多発性硬化症 (MS) の代表的な疾患モデルである。TMEVは神経系細胞も含め多種の細胞に結合し感染するが、認識する受容体は不明のままである。申請者らは、TMEVが免疫グロブリン様受容体であるSiglec-Eに結合することを見出した。そこで本研究においては、TMEV誘導性脱随疾患モデルにおけるSiglec-Eの寄与を追求することにより、多発性硬化症の新たな発症機序の解明と治療標的分子としてのSiglec-Eの可能性を追求することを目的とした。平成28年度は細胞株においてTMEV受容体としてのSiglec-Eの寄与を明らかにすることを計画した。初めにSigle-Eの一過性の遺伝子導入株での再現実験を行った。また、Cas9/CrisperおよびshRNAベクターによるSiglec-E恒常的欠損株を作製するための、ベクターを構築した。同定した標的配列を用いたshRNAレンチウルスベクターの構築も行った。さらにTMEVの適切な非感染細胞株を検討したところ、マクロファージ系の細胞株に感染しないことを見出した。現在、この細胞株において恒常的発現系の樹立を試みている。今後TMEVとの結合、またウイルス増殖およびサイトカイン産生に与える影響を検討する予定である。さらに作製したレンチウルスベクターによる多発性モデルマウスの制御実験を行う予定としてる。
2: おおむね順調に進展している
一過性の発現株の再現実験とともに、平成29年度以降の計画としていたSiglec-EのshRNAベクターの作製を先行して行った。また、非感染株を見つけることができたため、Siglec-Eに加えて新たなTMEV受容体の同定を目指すことが可能となった。予想外の展開であり、概ね順調に進展していると考えられる。
非感染株を見つけたことから、定常的Siglec-Eの発現株を樹立する予定である。また、細胞株の実験と共にSiglec-Eの細胞外ドメインの可溶性リコンビナントタンパク質の作成を行う。一方、平成29年度以降の計画としていたSiglec-EのshRNAベクターの作製を終了していることから、予定通りSiglec-Eのノックダウンを行い、TMEV誘導脱随疾患モデルの発症制御を試みる予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Scientific Report
巻: 6 ページ: 26266
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Inflammation Research
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