研究課題/領域番号 |
16K09705
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
平野 牧人 近畿大学, 医学部, 准教授 (50347548)
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研究分担者 |
西郷 和真 近畿大学, 理工学部, 准教授 (50319688)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 治療薬開発 |
研究実績の概要 |
本研究はERBB4を介する筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症機序解明と抗がん剤を含むリン酸化調節剤や下流カスケードの修飾効果を、ALS患者人工多能性幹(iPS)細胞由来神経細胞や神経様細胞で検証する事を目的とする。本年度は、下記の成果を得た。 1.ERBB4変異導入神経芽腫SH-SY5Y細胞の解析:前年にERBB4遺伝子の野生型と新規3変異および既報告1変異をC端‐GFP‐ERBB4としてプラスミドに組み込み、神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に発現させたところ、一部細胞膜に局在していた。一方、本年度はN端-GFP-ERBB4の発現実験を行ったが、蛍光顕微鏡およびウエスタンブロットともに発現を確認できなかった。以上から、今後の研究はC端‐GFP‐ERBB4を用いて実験を行うことにした。 2.抗がん作用のあるリン酸化阻害剤の効果検証:ERBB4発現-神経様SH-SY5Y細胞を用いて、抗がん作用のあるリン酸化阻害薬の薬剤負荷を行った。ラパチニブはERBB1,2の、アファチニブは、ERBB1-3の阻害剤であるが、ともにERBB4への作用も報告されている(Sci. Signal., 2014;7:ra116; Structure. 2008;16: 460)。抗リン酸化ERBB4抗体によるウエスタンブロットを行った結果、ラバチニブではリン酸化蛋白の低下はなかったが、ERBB4の生理的切断は阻害されていると考えられた。一方、アファチニブではリン酸化ERBB4が著減していた。ただし、細胞障害性が観察されたので、現在用量の調節を行っている。 3.iPS細胞由来神経モデルの確立:患者および正常iPS細胞を用いて、ALS病変の主体である運動ニューロンへの分化を試みた。正常iPS細胞は運動ニューロンへの分化がみられ、分化のマーカーであるコリンアセチルトランスフェラーゼの発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度に予定していたERBB4の翻訳後修飾について、すでに検討が進んでいる。一方、ERBB4の遺伝子編集に関しては、予定していたベクターの効率が十分でなく、導入方法やベクターの変更を検討しており、これが不調に終わった場合には、siRNAによるノックダウンで代用する予定である。また、正常者由来のiPS細胞から筋萎縮性側索硬化症における変性の中心である運動ニューロンへの分化誘導が技術的に確立でき、今後、患者細胞を分化誘導し、前年同様な細胞の染色、蛋白解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.神経系モデル細胞を用いた薬剤効果判定 病態の普遍性を検証するため、ERBB4遺伝子異常のないALS患者細胞も用いて、前年までと同様に神経細胞を固定したのち、細胞形態や抗ERBB4抗体を使用しての、翻訳後修飾や細胞内局在変化・ストレス反応を確認する。アファチニブとラパチニブの効果もウエスタンブロットを用いて検証する。また、患者iPS細胞由来の運動ニューロンに対して上記薬剤の効果判定を行う。
2.CRISPR-Cas9システムを用いた神経系モデル細胞における変異の導入 ヒトiPS細胞を用いたゲノム編集はすでに報告されており、ERBB4遺伝子に対して変異を導入することを検討したが、当初使用予定のオールインワンベクターによる変異の導入効率が良くないので、導入方法やベクターを変更する。また、それが不調に終わった場合にはsiRNAによる遺伝子抑制を試みる。また、ゲノム編集が成功した場合には、オフターゲット効果の検証を行う。
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