研究課題
本研究はERBB4を介する筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症機序解明と抗がん剤を含むリン酸化調節剤や下流カスケードの修飾効果を、ALS患者人工多能性幹(iPS)細胞由来神経細胞や神経様細胞で検証する事を目的とする。本年度は、下記の成果を得た。1.ERBB4変異陽性iPS細胞の解析ERBB4変異陽性のALS患者由来細胞、変異陰性患者由来細胞、正常細胞を神経細胞に分化誘導した。その結果、変異陽性と陰性のALS患者細胞では、細胞の維持が困難であった。抗酸化作用のあるレチノイン酸は一部そういった細胞死を抑制できたが十分ではなかった。また、オートファジー促進作用のあるラパマイシンも同様の効果が軽度認められた。細胞内に様々な封入体に陽性となる、p62陽性の凝集などは認められなかった。2.抗がん作用のあるリン酸化阻害剤の効果検証ERBB4発現-神経様SH-SY5Y細胞を用いて、抗がん作用のあるリン酸化阻害薬の薬剤負荷を行った。ラパチニブはERBB1,2の、アファチニブは、ERBB1-3の阻害剤であるが、ともにERBB4への作用も報告されている(Sci. Signal., 2014;7:ra116; Structure. 2008;16: 460)。抗リン酸化ERBB4抗体によるウエスタンブロットを行った結果、ラバチニブではリン酸化蛋白の低下はなかったが、ERBB4の生理的切断は阻害されていると考えられた。これらの細胞は、H2O2による酸化ストレスへの脆弱性を示しており、ラパニチブでは、細胞死の部分的な抑制効果がある場合もあったが、変異によりその効果が異なっていた。一方、アファチニブではリン酸化がほぼ完全に阻害されていた。ただし、細胞障害性が観察された。酸化ストレスに対する、細胞死抑制効果は観察されず、むしろ細胞毒性が顕著にみられた。
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