研究課題
【リーチング課題における眼と手の協調関係 -神経疾患患者での検討-】純粋小脳型の遺伝性脊髄小脳変性症8例(SCA6,SCA31)と健常者19名においてリーチング動作施行中の眼と手の協調関係を調べた。タッチパネル上に提示されたターゲットに向かって指を動かすリーチング課題(視覚誘導性リーチング課題)を行わせたところ、SCD群・健常群とも視線をまずターゲットの位置に固定し、その後手をターゲットに向かって動かすという順序で動作を行った。SCD群では固視の能力が低下し、眼球運動も不正確となるため、ターゲットが呈示されてから、視線がターゲットに固定されるまでの時間が健常者より有意に長かった。そのため手がターゲットに向かって動き出すタイミングも遅れる傾向があった。リーチングの手の軌跡はSCD群で健常群よりもスムーズさを欠き、手の最終的な到達点もターゲットの位置を行きすぎたり手前で止まったりするため、試行ごとのばらつきが大きかった。一方、視覚的に呈示されたターゲットではなく、記憶しておいた位置に向かってリーチングする課題(記憶誘導性リーチング課題)を行う際には、このような眼と手の協調関係は明らかではなかった。【学習課題施行中の眼と手の協調関係の変化の検討 -神経疾患患者での検討-】昨年度作成した運動学習課題を用いて、神経疾患、とりわけパーキンソン病患者で、学習過程での眼と手の協調関係の変化を調べ、健常者との比較を行った。【系列動作課題における眼と手の協調関係の検討 -神経疾患患者での検討-】より日常的な状況で行われる系列動作における視線と手の協調関係を調べるため、視線計測装置と磁気センサーつきのモーションキャプチャーシステムを組み合わせた装置を作成した。脊髄小脳変性症、パーキンソン病、正常者に複数のブロック積み課題を行わせ、日常動作における動作障害に眼と手の協調関係の果たす役割を検討した。
2: おおむね順調に進展している
計測システムのセットアップ、課題作成はほぼ終了し、各種課題について神経疾患患者での検討が進行中であるが、症例検討数についてはさらに数を増やす必要がある。
神経疾患患者においてリーチング課題、系列動作課題、学習課題など各種の課題施行中の眼と手の協調関係について症例数を増やして検討するとともに、神経疾患における眼と手の協調関係が患者の動作障害にどのような影響を与えているかを解析し、動作障害の病態基盤について総合的に明らかにする。また眼と手の協調関係にかかわる中枢神経制御機構を明らかにするため、上記の系列動作課題を施行中の被験者の脳活動を脳波により記録し、その経時的な変化を調べる。また系列動作施行中の様々なタイミングで、経頭蓋的に大脳皮質の各領域を刺激することにより、系列動作がどのように障害されるかを明らかにする。以上の結果をあわせ、神経疾患の動作障害に眼と手の協調関係の異常がどのように寄与しているかを明らかにし、どのような中枢神経機構の異常が、動作中の眼と手の協調関係、さらに神経疾患の動作障害の基盤になっているかについて総合的な結論を出す。
当該助成金の次年度使用額が生じた理由は、実験用の被験者の数が今年度十分にとれなかったため、磁気刺激の実験セットアップの遅れによるものである。来年度に当初の予定されていた数の被験者をリクルートする。また磁気刺激の実験の装置開発は今年度行っていく。また得られた研究の成果を今年度積極的に学会・論文等で発表していく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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