研究課題
日常動作では、扱う物体やターゲット(標的)の位置に眼が先行して到達し、それに遅れて手が到達する眼と手の協調関係が見られる。手の運動に先立つ眼球運動はその運動調節に必要な情報をもたらすと考えられ、小脳がこの協調関係に重要な役割を果たすとされる。小脳疾患患者でこの協調関係がどのように障害され動作障害に影響するか検討するため、純粋小脳型の脊髄小脳変性症(SCD)患者(SCA6と31)と健常者を対象に例数を増やして、タッチパネル上でリーチング動作中を行わせた。ビデオ式アイトラッカーで眼球運動を、タッチパネルで指の運動を同時記録し、詳細に解析をした。眼で見えているタッチパネルの標的に手でリーチングする視覚誘導性リーチング(VGR)課題と、ターゲットの場所を覚えておき、これが消えた後記憶に従ってリーチングをする記憶誘導性リーチング(MGR)課題を用いた。VGR課題では両群とも上で述べたような眼と手の協調関係を認めたが、SCA群では目的の場所で手を止められず行き過ぎたり、手前で止まったりすることが多かったが、この際、眼がターゲットを捉える正確さと指がターゲットに到達する精度は相関していた。両課題とも最終的な指の標的到達時間が有意に延長し、特に指の運動時間と眼の標的到達後指の動きが開始するまでの時間の延長が健常者より目立った。他方MGR課題では眼が指に先行する協調関係が明らかでなく、指に先行する視線の動きも小さいか、見られないことも多かった。眼と指がターゲットを捉える精度には相関がなかった。さらに、より一般的な日常動作中でも手と眼の動きを同時記録できる装置を作成し、ブロック積みの課題などを行わせたときの眼と手の協調関係を検討した。SCD群ではタッチパネル上でと同様の眼と手の協調運動の異常を認めた。これらの結果は失調症状の特徴を明らかにし、臨床的な定量的評価するのに役立つと考えた。
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Brain Stimulation
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