研究課題
アルツハイマー病では,酸化ストレスがアミロイド沈着などの病理変化・神経変性に関与していることが示唆されているが,患者生体脳における実証はまだない.本研究では,我々が開発した[Cu-64]ATSM PET/MRIによる酸化ストレスイメージングによって,アルツハイマー病およびその前段階の軽度認知障害における,病態への酸化ストレスの関与を明らかにすることを目的としている.1年度目には,動物(マウス)を使用した前臨床試験(毒性試験)を行って[Cu-64]ATSMに毒性がないことを確認し,本研究プロトコールについて当大学の医学系研究倫理審査委員会の承認を受け,患者および健常者に対するパイロットスタディを行った.2年度目には,研究プロトコールに則り,アルツハイマー型認知症(AD)患者群,軽度認知障害(MCI)患者群,および認知機能正常(CN)者群に対して,[Cu-64]ATSM PET/MRIによる酸化ストレスイメージング,[C-11]PiB PET/MRIによるアミロイドイメージング,WMS-RやCDRによる詳細な心理・認知検査を実施した.最終年度である今年度では,引き続き上記の被験者群に対して画像および心理検査を実施し,解析を行った.その結果,[C-11]PiB PET/MRIにて大脳皮質へのアミロイド沈着がみられたAD患者群では,同年代のアミロイド陰性のCN者群に比べて,側頭葉などアルツハイマー病理に関連する脳領域における[Cu-64]ATSM集積の増加が見出された.さらに[Cu-64]ATSM集積は,[C-11]PiB集積によるアミロイド沈着の程度や,CDRによる臨床的重症度と正の相関をしており,アルツハイマー病態への酸化ストレスの関与を強く示唆する結果が得られた.
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