研究課題/領域番号 |
16K09713
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 友彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00437039)
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研究分担者 |
渡辺 宏久 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任教授 (10378177)
平山 正昭 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (30283435)
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 多系統萎縮症 / 睡眠障害 / 日中過眠 / メラトニン / 認知機能 |
研究実績の概要 |
2017年度は新たにパーキンソン病7例、多系統萎縮症6例、REM睡眠行動異常症4例の新規組み入れを行うとともに、パーキンソン病17例、REM睡眠行動異常症6例について開始1年後のメラトニン収集および関連データ取得を行った。また16例においてメラトニン濃度分析を行った。2016年度から合わせるとパーキンソン病は53例、多系統萎縮症は14例、コントロールコントロールは25例となった。 パーキンソン病に関しては、前年度までのデータで昼の眠気の原因として昼のメラトニン濃度上昇が関与している可能性、また夜間に上昇するべきメラトニンが早期から上昇し中途覚醒や早期覚醒の原因となっている可能性が示唆されたが、症例を蓄積しても同様の結果が得られており、この点に関して現在論文作成中である。 パーキンソン病では疲労やMMSE、FABといった認知機能障害が睡眠障害と関連するという既報告があるが、現段階ではメラトニン濃度とこれらの非運動症状の関連ははっきりせず、さらなる検討が必要である。またパーキンソン病においてこれらの非運動症状について1年後の再検を行っているが、PDSSやMMSE、FABなどのスコアは前年と比し有意な変化はなく、より長いスパンでの観察が必要かもしれない。 他のパーキンソニズムを来す神経変性疾患については多系統萎縮症において12例の解析を行ったが、多系統萎縮症ではパーキンソン病と異なり日中の過度の眠気と昼のメラトニン分泌異常との関連ははっきりしなかった。しかし多系統萎縮症はパーキンソン病同様に眠前のメラトニン濃度はコントロールに比し低値であった。このことから睡眠障害におけるなんらかの因子がメラトニン分泌異常と関与して臨床症状として出現している可能性があり、どのような睡眠障害が関連しているのかを解明している段階であるとともにこれらの点を学会発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パーキンソン病については、症例数は予定に達し順調である。またコントロールも目標数の解析が終わりメラトニン濃度と睡眠障害との関連性については論文作成中である。 他の神経変性疾患に関しては50例を当初予定していたが、進行性核上性麻痺といったパーキンソン病との鑑別が問題となる疾患については、有病率の低さも要因のひとつであるが、いまだ十分例が集まっておらず、データ収集についてはやや遅れている。多系統萎縮症に関しては比較的有意な例数が集まってきており、まずまず順調に進捗している状況である。今後さらに症例を蓄積してパーキンソン病との差異について何らかの知見をえられるよう解析を進めていく予定である。 パーキンソン病において認知機能や疲労とメラトニン濃度との関連に何らかの関連があると推定して解析を進めているが、現時点でははっきりとした関連性は見いだせておらず、この点に関してさらなる検討が必要である。 またパーキンソン病において疾患が進行していくなかで、認知機能障害や睡眠障害といった非運動症状の変化やメラトニン濃度の変化やそれらになんらかの関連性がないかという検討については、睡眠障害のスコアや認知機能は経過1年ではあまり有意な変化は見られなかった。さらに一年後のデータ収集を行う必要があると考えている。したがってこの点については現時点ではいまだ十分なデータを見出せるに至らず、やや遅れている状況である。なお、パーキンソン病におけるメラトニン濃度の経時的変化については近日中に解析予定である。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病に関しては疾患の進行とともに睡眠障害がどのように変化し、またそれに伴ってメラトニン濃度が変化するかといった点について検討するために、引き続き従来の被検者に対して再測定を順次行っていくが、前述したようにMMSEなど認知機能障害、疲労スコア、嗅覚スコアは1年の経過では目立った増悪を認めていないため、一昨年に施行したが昨年度に施行できなかった症例についても可能な限りデータ収集を図り、有意な解析結果が得られるように十分な症例数の蓄積を図る。またパーキンソン病において認知機能や疲労とメラトニン濃度との関連に何らかの関連があると推定して解析を進めているが、現時点でははっきりとした関連性は見いだせておらず、今後は各スコアにおいて下位項目の検討も行って何らかの知見を見出していきたい。 また他の神経変性疾患については例数が不十分なため、さらなる症例の蓄積が必要であり、関連病院などにも周知してデータの収集を継続していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)パーキンソン病以外の他の神経変性疾患について症例解析する予定であったが、症例数が集まらなかったため蓄積中である。 (使用計画)蓄積した症例解析に充当する予定である。
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