研究課題/領域番号 |
16K09721
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 信太郎 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90312876)
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研究分担者 |
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 活性化ミクログリア / 脊髄前側索 / galectin-3 / 運動ニューロン変性 / TDP-43 / p22phox |
研究実績の概要 |
1)前年度の成果に基づき、galectin-3に着目しALS突然死例の剖検時に脊髄組織から採取し凍結保存したtotal RNAを用いて、RT-PCR法により遺伝子発現解析を行った。GenBank (https://www.ncbi.nim.nih.gov/nuccore/AB086821.1)の情報をもとに作成したgalectin-3 exon3 (497bp)に対するプライマーの反応性をまず確認したところ、20サイクル付近で、no template controlにおけるプライマーダイマーの生成が確認された。このため現在、PCR至適条件の再考、プライマーの再設計を検討している。 2)海馬ニューロンを用いてtriple chamber neuron device (フナコシ社)により、活性化ミクログリア由来サイトカイン/ケモカインを軸索のみに作用させた際に生じる変化を検討した。同deviceのmicrogrooveの長さは標準的な450μmを使用したが、MAP2 、tauへの一次抗体を用いた免疫染色の結果、microgrooveバリア内に樹状突起が入り込んでいることが確認された。このため長さが900μmのものに変更して培養を行い観察 (免疫染色、annexin V/PI)したが、軸索伸長が不十分である14日目頃においてニューロン死が生じた。このため培養条件を再構築している。 3)Byrnesらの脊髄損傷の実験結果 (Glia, 2006)を参考に、活性後ミクログリアで発現が増加する複数の遺伝子に着目し、ALS剖検脊髄を用いて免疫染色を行った。結果、galectin-3やosteopontinの他にp22phox (活性後の発現ピーク:72時間~7日)陽性ミクログリアが、脊髄前側索のみでなく運動ニューロンがよく残存している灰白質前角において多数出現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)研究計画調書に基づき、RT-PCRによる遺伝子発現状況解析、triple chamber neuron deviceを用いた海馬ニューロンの培養実験を行った。予期せぬ事象が観察されたが、「研究実績の概要」に記載した通り代替手段による実験継続が可能である。 2)ALS剖検脊髄を用いた免疫染色により、新たにp22phox陽性ミクログリアが運動ニューロンがよく残存している脊髄灰白質前角で多数出現していることを発見した。ミクログリアを標識するために汎用されているIba-1抗体は、様々な活性化状態、様々な性格を有するミクログリアを一律に染色してしまうが、その中でp22phox陽性細胞はALSの運動ニューロン変性初期に関与するミクログリアとして分離できる可能性を初めて示した。
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今後の研究の推進方策 |
1)遺伝子発現解析については、PCRの至適条件を検討しプライマーの再設計も行い推進する。培養実験に関しては、海馬ニューロンのみでなく皮質ニューロンへ対象を広げる。以上の結果が適切に得られた場合、さらに活性化ミクログリアの発現遺伝子制御による治療効果の解析を行う。 2)ALS剖検脊髄を用いて早期病変、後期病変におけるp22phox陽性ミクログリアの分布を同定しTDP-43病理との相関解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく前年度の研究費も含めて当初の予定通りの計画を進める。
使用計画:免疫染色や培養実験、遺伝子発現解析と遺伝子制御実験を行うため一次抗体、試薬や培地の購入、プライマー再設計のための費用に用いる。
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