研究課題/領域番号 |
16K09728
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
杉江 和馬 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (60347549)
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研究分担者 |
西野 一三 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第一部, 部長 (00332388)
上野 聡 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40184949)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己貪食空胞性ミオパチー / オートファジー / 封入体筋炎 / 自己貪食空胞 |
研究実績の概要 |
希少難治性筋疾患のうち、オートファジー異常を原因とする疾患として、「自己貪食空胞性ミオパチー」がある。自己貪食空胞性ミオパチーは病理学的に極めて特徴的な自己貪食空胞を有する稀少な筋疾患で、根治療法はなく身体障害度は重度である。生体防御の機構として飛躍的に注目されているオートファジー分子機構の関与が疑われるが、依然原因不明で治療も未確立である。本疾患の空胞には、1)1次性ライソゾーム異常によるDanon病を代表とする筋鞘膜の性質をもつ自己貪食空胞、2)2次性ライソゾーム異常による縁取り空胞(RV)、がある。オートファジーには未解明の部分が多く、特に筋組織での研究は進んでいない。 平成28年度は、自己貪食空胞性ミオパチーのうち、特に2次性ライソゾーム異常による縁取り空胞を多数有する封入体筋炎を対象として、その臨床病理学的特徴について研究を行い成果を発表した。本疾患は、炎症性ミオパチーの一つであり、高齢者発症の筋炎の中で最多である。有効な治療法はなく予後不良で、厚生労働省の指定難病になっている。病態として、縁取り空胞にアミロイド蛋白やタウ蛋白など異常蛋白が蓄積するconformational disease、変性疾患としての性質とともに、MHC-I発現を多数認めCD8T細胞による浸潤を特徴とする免疫疾患の性質を有する。近年、封入体筋炎の血清中で抗cytosolic-5'-nucleotidase 1A抗体が発現していることが報告された。私たちは、この自己抗体の筋組織上での病理学的な発現を検討した。そして、封入体筋炎における骨格筋での抗cytosolic-5'-nucleotidase 1A抗体陽性線維の存在が、診断感度、特異度ともに高いことを示した。今後は、筋組織上での本抗体の役割解明やオートファジーとの直接的な関与について検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象疾患である自己貪食空胞性ミオパチーのうち、2次性ライソゾーム異常による縁取り空胞を有する代表疾患である封入体筋炎の病態解明に迫る研究を行い、抗cytosolic-5'-nucleotidase 1A抗体の重要性について臨床病理学的に結果を出し、学会発表、国際しに発表が行えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、1次性ライソゾーム異常によるDanon病を代表とする筋鞘膜の性質をもつ自己貪食空胞の病理学的解明とともに、引き続き、2次性ライソゾーム異常による縁取り空胞を有する疾患の病態解明について病理学的検討を行っていく。特に、Danon病については、過去の実態調査の追跡調査の位置づけで調査を行っており、本疾患の自然歴解明についても明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品として試薬などの研究費を購入したが、国際情勢の変動に伴い抗体の価格変動があり、少額ながら端数として次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、次年度以降の研究を遂行するための病理学的研究のための試薬購入に充当する予定である。
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