研究課題
希少難治性筋疾患のうち、オートファジー異常を原因とする疾患として、「自己貪食空胞性ミオパチー」がある。自己貪食空胞性ミオパチーは病理学的に極めて特徴的な自己貪食空胞を有する稀少な筋疾患で、根治療法はなく身体障害度は重度である。本疾患の空胞には、1)1次性ライソゾーム異常によるDanon病を代表とする筋鞘膜の性質をもつ自己貪食空胞、2)2次性ライソゾーム異常による縁取り空胞(RV)、がある。オートファジーには未解明の部分が多く、特に筋組織での研究は進んでいない。平成29年度は、自己貪食空胞性ミオパチーのうち、特に1次性ライソゾーム異常によるDanon病を対象として、過去の全国実態調査の追跡調査結果の解析を行った。前回調査で確認したDanon病13家系28例(男:女=13:15)に加え、今回新たに7家系11例(男:女=4:7)を見出した。本邦で現在までにDanon病と診断された症例として、20家系39例(男:女=17:22)を確認した。全例が心筋症を有し、一部は重症心不全を呈した。肥大型心筋症やWPW症候群などの心伝導異常が特徴であった。1例で心臓移植が実施され、左心補助人工心臓植込み例も認めた。発症に国内での地域の分布差はなく、遺伝子変異部位も家系によりすべて異なる。またde novoと考えられる例が10家系あった。筋病理学的には、全例において、軽度~中等度の筋線維径の大小不同がみられ、壊死・再生線維は認めない。小空胞をもつ筋線維が散在し、一部で酸フォスファターゼ活性が亢進している。この小空胞の膜に、アセチルコリン・エステラーゼ活性が認められ、ジストロフィンやサルコグリカンなどの筋鞘膜構成蛋白を発現し、我々が過去に報告した、筋鞘膜の特徴をもつ自己貪食空胞AVSFと一致した。今後は、筋組織上でのAVSFの形成機序解明について検討を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
研究対象疾患である自己貪食空胞性ミオパチーのうち、1次性ライソゾーム異常によるDanon病の自然歴解明と病態解明に迫る研究を行い、臨床病理学的に結果を出し、国際学会発表を行えた。
今後、2次性ライソゾーム異常による縁取り空胞を有する疾患の病態解明とともに、引き続き、1次性ライソゾーム異常によるDanon病を代表とする筋鞘膜の性質をもつ自己貪食空胞の病理学的解明についても行っていく。特に、Danon病については、自然歴解明についてもより詳細に明らかにしていきたい。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Sci Rep
巻: 8 ページ: 3316
10.1038/s41598-018-21602-8.
Neurosci Lett.
巻: 670 ページ: 75-82
10.1016/j.neulet.2018.01.040