研究課題/領域番号 |
16K09733
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
高堂 裕平 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (60593564)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 磁気共鳴スペクトロスコピー / ポジトロン断層撮像法 / アルツハイマー病 / タウオパチー / グルタミン酸 / 後部帯状回 |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果としては,①高感度MRSシーケンスであるSPECIALによるデータの検証を健常者20名で実施し,続いて②20例以上の被検者(タウオパチー患者および健常者)においてMRSとPETによるデータ取得を実施したことがあげられる. ①については,後部帯状回および小脳に関心領域をとり,汎用型シーケンスであるPRESSとの比較を行った.両領域においてSPECIALがPRESSよりも10%程度高い信号雑音比を取得していることを主要な代謝物において確認した.さらに,高感度MRSではN-アセチルアスパラギン酸(NAA)やグルタミン酸(Glu)のほかに,GABAやタウリン,グルコース,セリン等も測定可能であることが明らかとなってきた.これらの脳内分子は病態に重要なかかわりを有することが想定されるものの,汎用型のMRSでは測定が困難な分子でありまだ未解明の部分が多く残されている.本研究により,未解明の病態が明らかになってくることが期待される. ②については,MRS測定では,海馬および後部帯状回,また前頭側頭型認知症での前頭葉などを関心領域としてデータ取得を進めてきた.PET検査としては,タウ蛋白の蓄積をPBB3 PETで評価し,PiB PETやFDG PETも並行してデータを蓄積してきた.タウオパチー患者における測定によって,タウ蛋白と脳病態の関与を明らかにすることが可能になると考えられる.NAAやGluは神経細胞障害の指標となりえるため,タウ蛋白の蓄積とNAA,Gluの関与を明らかにすることで,将来的にMRSでタウ蛋白蓄積量を推定することが可能になりうる.タウオパチーに対する治療法開発の評価基盤として,MRSでの評価手法は有用であると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,アルツハイマー病および軽度認知機能障害,大脳皮質基底核変性症,進行性核上性麻痺,前頭側頭型認知症患者,その他のタウオパチーを対象としている.上記のとおり,今年度は患者及び健常者をあわせて20名以上でMRSおよびPETの撮像を行うことができており,計画通り順調に進展していると考える.高感度MRSの測定精度の検証を行った後,海馬及び後部帯状回での測定を進めてきた.これまでのところ,海馬での測定よりも後部帯状回での測定のほうが,病態を反映するマーカーとして使用しやすい可能性が見えてきている.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度もタウオパチー患者および健常者でのMRSおよびPETデータ収集を行っていく.今年度は蓄積してきたMRSとPETデータの解析を進め,タウ蛋白とMRSにおける代謝物との関連を明らかにしていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費の使用額が予定よりも少なかったことが理由の一つと考えられる.次年度の物品購入等に充てる予定である.
|