研究実績の概要 |
本研究では,ポジトロン断層法(PET)と磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)によりタウ蛋白病変と神経障害の関連を明らかにし,認知症の客観的な重症度評価指標を確立することを目的とした.具体的には,1)生体脳におけるPETで評価したタウ蛋白病変とMRSで評価した神経障害の関連を調べること,2)MRSを用いた認知症の神経障害に関する最適な評価手法を確立することを目的とした. 最終年度は前年度に引き続きタウオパチー患者(進行性核上性麻痺,アルツハイマー型認知症等)および健常高齢者を対象に,後部帯状回を関心領域としてMRSを実施してきた.平成29年度の検討で海馬のMRSは高磁場では実用性が低いことが判明したため,海馬のかわりに前部帯状回を関心領域としてMRSを実施し,同部位のタウPET解析を継続してきた.これまでの解析結果では,タウオパチー患者においてタウPETの集積量と脳内代謝物濃度に逆相関の関係が見えてきており,タウ蛋白が蓄積するほど脳内の神経障害が進むことを示唆する結果と推測された.さらにマルチボクセルのMRSイメージング(MRSI)でも検討を進めることができ,空間情報も得ることができている.今後はMRSIの解析もすすめ,タウ蛋白の分布と神経障害の分布の関連を調べていく予定である.本研究での生体患者脳におけるMRS, PET検査により,タウ蛋白が神経障害を引き起こすことが示唆された.MRSの代謝物濃度から推定される脳機能は治療介入によって変動すると考えられ,治療効果のバイオマーカーとしても用いることが可能になると考えられた.今後は,本研究で得られた知見を論文成果として報告していく予定である.
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