研究課題
神経変性疾患の中でも、パーキンソン病は罹患患者数が多く、年齢とともに罹患率も世界的に上昇している疾患である。このパーキンソン病罹患患者を早期に診断しうるバイオマーカーやサロゲートマーカーの確立が急務となっている。治療介入を早期より行うことで、いわゆる運動症状の出現や程度を軽減することがその目的である。バイオマーカーやサロゲートマーカーにはさまざまなアプローチが試みられている。病理学的なアプローチとしては、生検が検討されている。生検部位としては、皮膚、直腸、顎下腺が挙げられている。どの部位が妥当であるかに関して、東京都健康長寿医療センターの剖検例を用いて検討を行った。得られた検体は、それぞれHE標本を作製し、免疫染色(抗リン酸化αシヌクレイン抗体、抗αシヌクレイン抗体、抗ニューロフィラメント抗体、抗リン酸化タウ抗体、抗βアミロイド抗体等)を実施してLewy小体関連病理の発現を評価した。その結果、剖検例での検討では、Lewy小体発現が臨床的に初期の段階では、交感神経節がLewy小体関連病理の陽性率が1番高く、続いて心臓、食道、副腎、皮膚の順番であった。また、病理学的に診断する際のスクリーニングとして検索するべき部位の検討も行った。以前、われわれは、Lewy小体が嗅球から脳内に伝播することを報告したが、その知見に基づき、嗅球と密に連絡している大脳皮質である嗅内野に着目した。嗅内野でのLewy小体関連病理を重症度でグレードに分け、脳内での分布と比較した。その結果、嗅内野の重症度が高ければ、脳内での広がりも最も高くなることが判明した。嗅内野を抗リン酸化αシヌクレイン抗体で評価することで、脳内の広がりについておおよその予測がつくことができ、スクリーニングの部位として適している。
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