研究課題
WTマウス、CREB3L3 Tgマウス、FGF21 KOマウス、CREBH Tg FGF21 KOマウスに食餌誘導性の肥満を発症させるため、高脂肪高ショ糖食を摂取させた。CREB3L3 Tgマウスでは体重増加の抑制を示すのに対し、CREB3L3 Tg FGF21 KOマウスではその効果を示さなかった。それゆえ、FGF21がCREB3L3による肥満抑制に大きく関与することが示された。同様な変化が皮下脂肪、精巣周囲脂肪、褐色脂肪組織の重量でも観察できており、脂肪組織重量の変化はCREB3L3→FGF21の経路が関与することを示す結果であった。皮下脂肪では熱産生の律速遺伝子UCP1の発現がCREB3L3 Tgマウスで見られており、いわゆる拍脂肪組織のベージュ化(褐色脂肪化)が見られており、これが脂肪重量、体重減少に関わったと考えられた。この効果もCREB3L3 Tg FGF21 KOマウスでは観察されておらず、FGF21の関与が大きいことが示された。さらに白色脂肪組織おけるマクロファージの浸潤の抑制がCREBH Tgマウスで観察できており、このことがインスリン感受性の改善に寄与したと推察できる。しかしながら、CREB3L3 Tg FGF21 KOマウスでもインスリン感受性の改善効果はキャンセルされなかった。この原因となるCREB3L3が制御する肝臓で発現する遺伝子を網羅的解析から探索したところKisspeptinが候補として抽出できた。CREB3l3 Tg FGF21 KOマウスにKisspeptin RNAiアデノウイルスを投与するとインスリン感受性亢進が抑制でき、糖代謝の改善にKisspeptinが関連する可能性を示す結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
CREBHによる食餌誘導性の肥満、糖尿病の改善のメカニズムとして、FGF21 KOマウスを使い、その作用点を明らかにした。糖代謝に対する改善はFGF21を介したものではないことも明らかにできた。この糖代謝改善作用に関わるCREBHの標的遺伝子の一つとしてKisspeptinが候補になる可能性を示唆できた。
今後はCREB3L3によるKisspeptinの発現制御の詳細をプロモーター解析から明らかにしていく。Kisspeptinの作用機序とCREBHによる肥満改善作用がオーバーラップする点を明確化する。さらに肥満・糖尿病モデルであるob/obマウス、db/dbマウスとCREB3L3 Tgマウスを交配し、それぞれのマウスの病態を改善するかを検討する。その際にはFGF21、Kisspeptinによる作用に着目し解析を行う。FGF21、Kisspeptin以外の作用機序についても引き続き解析を行う。その後、論文として報告する計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
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http://www.u-tsukuba-endocrinology.jp/