研究課題
In vitroの系で、抗高脂血症薬として臨床で使用されているEPA(イコサペンタエン酸)が培養肝細胞のセレノプロテインP (SeP)発現を抑制することを見出した。EPAは脂質異常症の適応以外にも、インスリン抵抗性改善薬としての適応も期待できる。ヒトを対象としたEPAの臨床研究で、インスリン抵抗性を評価した研究は未だ存在しないことから、EPAの内服でインスリン抵抗性が改善するかをグルコースクランプ試験にてコントロールを対照としたランダム化比較試験を施行した。適格基準を20歳以上の2型糖尿病患者かつ高中性脂肪血症患者をEPA群(E群:EPA1800㎎投与)あるいは観察群(C群)の2群にランダムに振り分け、3か月間観察行った。主要評価項目をSePの変化、副次評価項目をグルコ-スクランプによるインスリン抵抗性の変化・血糖変化・脂質変化・身体組成変化・安全性と有害事象評価等とした。パイロットスタディとして各群10例ずつ計20名エントリ-した。両群の患者背景は、年齢・空腹時血糖・HbA1c・脂質状態(総コレステロ-ル・中性脂肪)・SeP濃度は同等であった。3ヶ月後血中SeP濃度は両群とも前後で変化(E 4.30 ± 0.76 → 4.22 ± 0.71, C 4.46 ± 0.53 → 4.45 ± 0.89)しなかった。空腹時血糖は、両群ともに変化しなかった。HbA1cはC群で上昇傾向(6.6 ± 0.8 → 7.0 ± 1.1%, P=0.088)にあるも、E群では変化しなかった。C群にて体重 (79.1 ± 23.7 → 80.7 ± 25.7 kg, P=0.093)・BMI (27.7 ± 6.5 → 28.4 ± 7.2, P=0.079)が上昇傾向にあるも、 E群では変化しなかった。
3: やや遅れている
1.肥満・2型糖尿病モデルマウスを用いてPA及びEPAを投与し、脂肪酸がSeP発現の制御を介し、全身のインスリン抵抗性に与える影響と機序の解明を行う予定であった。しかしながら、培養実験において、EPAがSREBP-1cの核移行の抑制、不活化を介して肝細胞でのSeP発現を抑制する機序の解明に時間がかかったため、マウスへの脂肪酸投与が肝臓SEPP1発現およびインスリン抵抗性に及ぼす作用が明らかにはなっていない。2.ヒトのEPA臨床研究:EPA投与と臓器特異的インスリン抵抗性の変化との関連を明らかにする必要がある。さらに健常人と糖尿病患者とのSeP値について明らかにする必要がある。
1.マウスへの脂肪酸投与が肝臓SEPP1発現およびインスリン抵抗性に及ぼす作用(動物実験)肥満・2型糖尿病モデルマウスを用いてPA及びEPAを投与し、脂肪酸がSeP発現の制御を介し、全身のインスリン抵抗性に与える影響と機序の解明を行う。2.ヒトへの脂肪酸投与が血中SePレベルおよびインスリン抵抗性に及ぼす作用(臨床研究)ヒトを対象としたEPAの臨床研究のエントリ-は終了しており、安定同位体標識グルコース(6,6-2H2グルコース)併用高インスリン正常血糖クランプ検査法もEPA投与前後で終了しているので、EPA、SePと臓器特異的インスリン抵抗性との関連を明らかにすることが可能である。
(理由)平成30年度に臨床研究に加えて動物実験を予定していたが、どちらも最終結果に至らなかった。次年度に臨床研究の最終結果ならびに残りの動物実験を行うこととしたので、それに伴う経費は繰越とした。(使用計画)マウスへの脂肪酸投与が肝臓SEPP1発現およびインスリン抵抗性に及ぼす作用について、実験用動物、試薬等に使用する。
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