研究課題
申請者はこれまでに、肝由来分泌タンパクであるセレノプロテインP(SeP)およびLECT2が、それぞれインスリン抵抗性を誘導し高血糖を発症させる“ヘパトカイン”であることを報告した (Cell Metabolism 2010、Diabetes 2014)。その後、SePが受容体LRP1を介して筋に作用することで、運動の効果発現が減弱するという運動抵抗性を惹起することを報告した(Nature Medicine 2017)。本研究では、肝細胞でSePとLECT2の両者の遺伝子発現を制御しうる新たな鍵転写因子を同定・機能解析し、この転写因子を標的とした肥満2型糖尿病に対する治療を開発するための研究基盤を確立する。これまでの研究において、ヒト肝臓遺伝子情報を用いて候補転写因子KLF16を同定した。このKLF16がSePのプロモーターのどこに結合するかを解析した。SePプロモーターのdeletion mutantを作成し、プロモーター領域のおおむねどこに結合するかまでは同定できた。また、肝特異的KLF16欠損マウスの解析を開始した。Albプロモーター下Cre発現マウスとfloxマウスを交配することで作成されたこのマウスは、realtime PCRによって解析した結果、確かに肝組織のみでKLF16の遺伝子発現の低下を認めた。このマウスに高脂肪食を負荷して肥満糖尿病を惹起したが、耐糖能やインスリン感受性に差を認めなかった。今後、Cre発現アデノウイルスを使用してアダルトマウスでKLF16をノックダウンする実験を計画している。
4: 遅れている
肝特異的KLF16欠損マウスを作成したが、耐糖能やインスリン感受性に関するフェノタイプの有意差を認めなかった。
肝特異的KLF16欠損マウスは、生下時から標的遺伝子が欠損しているため、何等かの代償機構が働いたためにフェノタイプが消失したものと推察した。Cre発現アデノウイルスを用いて、アダルトマウスになってからKLF16の発現を抑制する手法を用いて、追加の動物実験をおこなうこととした。
作成した遺伝子欠損マウスに有意なフェノタイプを認めなかったため、アデノウイルスを用いた別の手法でアダルトマウスでの遺伝子発現抑制マウスを作成する必要が生じたため、次年度使用とすることとした。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Biol Pharm Bull
巻: 42 ページ: 373-378
10.1248/bpb.b18-00549
Scientific Reports
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