研究課題
これまでに、肝由来分泌タンパクであるセレノプロテインP(SERENOP)およびLECT2が、それぞれインスリン抵抗性を誘導し高血糖を発症させる“ヘパトカイン”であることを報告してきた(Cell Metabolism 2010、Diabetes 2014)。本研究では、肝細胞でSERENOPとLECT2の両者の遺伝子発現を制御しうる新たな鍵転写因子を同定・機能解析し、この転写因子を標的とした肥満2型糖尿病に対する治療を開発するための研究基盤を確立する。2型糖尿病患者の肝臓での包括的な遺伝子発現データから、SERENOPおよびLECT2と正に相関する転写因子を探索した結果、Xを同定することができた。また、この転写因子Xは2型糖尿病患者のインスリン抵抗指数と正に相関していた。マウス肝臓細胞において転写因子Xを過剰発現させるとSelenopとLect2の発現量は共に上昇し、siRNAによるノックダウンによって両者は減少することも確かめられた。さらにCRISPR/Cas9技術を用いて、転写因子Xのfloxマウスを作成し、このマウスとアルブミンプロモーターCreマウスを交配させることによって、肝臓特異的転写因子X欠損マウスを作成した。遺伝子発現解析の結果、肝臓における転写因子Xの発現量は低下していたが、SelenopとLect2の発現量は野生型と比べて変わらなかった。また、血糖値、インスリン値、体重、耐糖能も変化はなかった。そこで、転写因子XのfloxマウスにCre発現アデノウィルスを尾静脈から投与し、後天的な肝臓特異的転写因子X欠損マウスを作成した。このマウスでは肝臓において転写因子Xの発現量低下と共に、SelenopとLect2の発現量の低下も認められた。加えて、糖新生系遺伝子発現の低下と空腹時血糖の低下も確認することができた。
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