研究課題/領域番号 |
16K09741
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
滝澤 壮一 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (80456467)
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研究分担者 |
北村 健一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10304990)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 脂肪肝 / インスリン抵抗性 / プロスタシン |
研究実績の概要 |
肝臓特異的プロスタシン過剰発現(LTg)マウスを用いて高脂肪食負荷を行ったところ、LTgマウスでは野生型(WT)マウスに比べ糖尿病発症が抑制されることに加え、脂肪肝の発症も抑制されていた。DNAマイクロアレイでも脂質代謝に関わる遺伝子の発現がLTgマウスで有意に低下していた。血清プロファイルではLTgマウスでLDL-Cが低値であり、プロスタシンが肝臓へのLDL-C取込みを制御している可能性が疑われた。LTgマウスの肝臓の膜蛋白を抽出しWestern blottingでLDL受容体を定量したところ、WTマウスに比較し、LTgマウスで有意にLDL受容体の発現が低下していた。さらに、ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2にプロスタシンを過剰発現させて脂質の取り込みを確認したところ、コントロール群に比べ、脂質の細胞内への取り込みが抑制されていた。 また、新たに判明したこととしては、LTgマウスでは肝臓に過剰発現するプロスタシンに由来すると考えられる血中プロスタシン濃度が上昇しており、脂肪組織炎症が改善していた。これは肝細胞に発現するプロスタシンが血中に遊離して肝臓以外の臓器にも作用する可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓特異的プロスタシン過剰発現(LTg)マウスの高脂肪食負荷の実験で、当初予想していなかった脂肪肝の発症の抑制が認められた。この脂肪肝の発症抑制が、糖代謝改善に寄与している可能性が疑われるため、プロスタシンによる脂肪肝の発症抑制の具体的な機序解明に研究時間を割いている。そのため、当初予定していた肝臓のプロスタシン活性化に関する検討がまだ行えていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、肝臓の脂質取り込みに関連する膜蛋白にプロスタシンが作用し、脂肪肝とインスリン抵抗性が改善している可能性を考えている。LTgマウス由来初代培養肝細胞における種々の脂質トランスポーターとその関連分子の蛋白発現を検討し、肝細胞におけるプロスタシンの新規標的蛋白を絞り込む。プロスタシンによる切断予測部位の変異体を作成し、組換えプロスタシンとのin vitroの反応系により作用部位の同定を試みる。また、候補的アプローチの進捗が思わしくない場合のため、SILAC法による網羅的探索を並行して実施する。 さらに、血中プロスタシンの肝外臓器への作用機構の解明と糖・脂質代謝異常への治療的応用を考えている。マウスへのプロスタシン投与による糖・脂質代謝異常の治療効果の検討として、組換えプロスタシンを高脂肪食負荷マウスに浸透圧ポンプを用いて投与し、糖・脂質代謝表現型及び代謝関連臓器の遺伝子・蛋白発現を解析する。培養細胞を用いプロスタシンの肝外臓器への作用機構を解明するため、脂肪細胞株、骨格筋細胞株にLTgマウス由来初代培養肝細胞の培養上清、並びに組換えプロスタシンを添加し、候補的並びに網羅的(DNAマイクロアレイ解析)手法によりプロスタシンの肝外臓器への作用を検討する予定である。
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