研究課題/領域番号 |
16K09742
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
恒川 新 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (40612768)
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研究分担者 |
山本 朗仁 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (50244083)
清野 祐介 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80534833)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵島移植 |
研究実績の概要 |
初年度は、C57B6マウスをドナーとして膵島数75~200個で、ストレプトゾトシン(STZ)処置糖尿病C57B6マウスに移植し、膵島単独移植とヒト歯髄幹細胞(DPSC)/膵島同時移植を行うもデータのばらつきが多く、昨年度はドナーとレシピエントはSDラットに変更し、同時移植にはラットGFP歯髄幹細胞を用いた移植実験を行いその効果を検討した。移植膵島数を200から400個に増量してその効果を随時血糖やブドウ糖負荷試験を用いて耐糖能を評価した。また移植方法として、従来の腎皮膜下への移植方法に加えて、現在実際にヒトで行われている膵島移植の方法と同様の門脈からの肝臓への膵島移植方法も検討した。 組織幹細胞の同時移植の膵島に対する保護効果のメカニズムを検討するため、歯髄幹細胞と膵島の共培養を行いその膵島保護効果としてインスリン分泌能の変化を検討した。さらにそのインスリン分泌能の改善の機序を検討するため、ヒト乳歯歯髄幹細胞の培養上清を遠心限外濾過法を用いて、分子量ごとに5群のフラクション(~20、20~60、60~100、100~200、200~kDa)に分け、各フラクションごとにその膵島への作用を検討し、またヒト乳歯歯髄幹細胞の培養上清を超遠心法で歯髄幹細胞のエクソソームを回収し同様にその膵島への作用を検討した。さらに、現在の臨床での膵島移植の生着率の低さの原因として、膵島単離による血管系や神経系の脱落が想定されているため、組織幹細胞による抹消神経細胞への効果も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in vivoでの実験は、SDラットを用いた膵島移植による血糖値改善効果は、随時血糖やブドウ糖試験でデータのばらつきが大きく統計学的有意差が出なかった。一方で血中インスリンに関しては、膵島移植により血中インスリン濃度が最大コントロールに比べて約2倍の値(ブドウ糖負荷後60分値 0.64ng/ml)を示したが、ラットGFP歯髄幹細胞によるその効果増強作用は認められなかった。移植先として腎皮膜化への移植に加えて、門脈経由の肝臓への移植方法を試みるも血糖値改善効果は認めず、また移植ラットの生存率も半分以下であった。 ヒト乳歯歯髄幹細胞と膵島の共培養による膵島保護効果の検討では、高グルコース刺激によるインスリン分泌を2.1±0.8倍増強した。その共培養によるインスリン分泌増強効果の作用機序を確認するため、ヒト乳歯歯髄幹細胞の培養上清を、遠心限外濾過法を用いて分子量ごとに5群のフラクションに分けて、また超遠心法(25000rpm 70min)で歯髄幹細胞のエクソソームを回収し効果を検討したところ、分子量別では100kDa以上のフランクションのみでインスリン分泌増強作用を認め、またエコソソーム添加による効果に関しては、増強傾向を示したが統計学的有意差は認めなかった。神経に関しては、脊髄より後根神経節細胞を単離し、ヒト乳歯歯髄幹細胞の培養上清と共培養によって明らかな神経突起伸長の増加を示し、幹細胞同時移植による神経系を介した移植効率の改善の可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroでの実験は進捗を認めるも、in vitroでの検討に再現性を認めないためレシピエントとドナーのモデル動物の変更を行う。STZによる糖尿病モデル動物の作成は、当施設ではSDラットが再現性が高く適していたが、同種移植の自己免疫の観点より、Wisterラットを用いて検討することした。膵島単独移植と幹細胞としてはヒト乳歯幹細胞を用いて膵島同時移植の効果の比較検討を行う。移植先も門脈経由の肝臓ではなく、従来通りの腎皮膜下とし、その後耐糖能に関しブドウ糖負荷試験や残存移植膵島の免疫学的検討などによりその評価を行う。 また、in vitroでは、ヒト歯髄幹細胞の膵島保護効果のメカニズムを、昨年度はインスリン分泌は100kDa以上の分泌因子による改善効果が示され、本年度はインスリン分泌能に加えて膵島のviabilityの観点から、ヒト歯髄幹細胞の膵島の共培養において、MTT assayを用いて膵島のviabiltyの変化を観察し、改善を認めるようであれば小胞体ストレス、酸化ストレス、オートファージーなどの組織幹細胞の膵島保護効果の分子メカニズムを詳細に解明するため、real time PCRや免疫染色を用いてその関連因子の発現を比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額を用いて本年度の助成金と合わせて物品人して使用する予定
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