研究課題
O-GlcNAc修飾は、ブドウ糖の代謝により生成されたFructose-6-phosphateの一部がヘキソサミン生合成経路に流入後の代謝産物であるUDP-GlcNAcを基質とし、O-GlcNAc transferase(OGT)によりserine/threonine残基に付加される修飾である。O-GlcNAc修飾の骨格筋における役割を検討するために骨格筋特異的Ogtノックアウトマウス(Ogt-MKO)を用いて検討した。運動負荷を行うと、対照群に比してOgt-MKOは有意に運動後の血糖が低値であり、運動後にAMPKと基質であるACCのリン酸化が亢進していた。さらにAMPK活性化剤であるAICARの腹腔内投与によりOgt-MKOでは顕著な血糖低下を来した。Ogt-MKOでAMPK蛋白発現が増加しており、これがAMPK活性化の機序と考えられた。Ogt-MKOは高脂肪食摂取下の体重増加の抑制、空腹時血糖低値および血清インスリン低値を示した。高脂肪食負荷後の糖負荷試験や高インスリングルコースクランプ法でインスリン感受性が亢進していた。本モデルでもAMPK蛋白発現が増加していた。また、12-13週齢の加齢状態でも体重増加が抑制されており、AMPK蛋白発現が増加していた。C2C12筋細胞においてOgtをsiRNAでノックダウンさせたところ、培養細胞においてもAMPK蛋白発現が増加しており、ブドウ糖取り込みも亢進している事が確認された。以上より、骨格筋においてO-GlcNAc修飾はブドウ糖取り込みの量を感知する栄養センサーとしての役割を担っており、その欠損はAMPKを介した代償性の糖取り込み増加を来すことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
韓国との国際共同研究で、12-13週齢のマウスを検討する必要があったため、やや遅れを呈していた。
ヒトiPS細胞を用いたOgtノックダウンによるファイバータイプへの影響について検討予定である。ノックアウトマウスやC2C12培養細胞で得られた知見がヒトに外挿できるかを検討すため、ヒトiPS細胞で検証する。我々は既にiPS 細胞を高率に骨格筋へ分化分化する事を確認してい。OgtをsiRNAでノックダウンした後に、骨格筋分化マーカー、ミトコンドリア量、AMPKタンパク量、代謝フラックスについて検討予定である。また、細胞を高血糖などの過栄養条件に暴露させて際のOgtの役割についても検証したいと考えている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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