研究課題
栄養素の摂取によって腸管内分泌K細胞より分泌されるGIPは、脂肪組織へのエネルギー蓄積作用を有し慢性的な高脂肪食摂取下に肥満とインスリン抵抗性を誘導する。栄養素の中で脂質の摂取は強力にGIP分泌を刺激するが、その機序については不明な点が多い。申請者はK細胞の可視化と回収を可能とするGIP遺伝子にGFPを挿入したGIP-GFP knock-inマウスを作製し、K細胞が上部小腸のみに発現すること、長鎖脂肪酸を主なリガンドとする脂肪酸受容体GPR120が上部小腸K細胞にGPR40が下部小腸K細胞に特異的に発現していることを明らかにした。しかし両受容体のGIP分泌に対する関与や寄与について直接比較した報告はない。本研究では、GPR120欠損およびGPR40欠損マウスを用いて脂質摂取時のGIP分泌亢進に対する両受容体の役割について比較検討した。経口コーン油負荷試験(OCTT)におけるGIP分泌量は、WTに比して GPR120欠損マウスは50%、GPR40欠損マウスは80%減少した。コーン油負荷後の血中CCK濃度は、 WTに比して GPR120欠損マウスは50%、GPR40欠損マウスは80%減少しており、経腹壁エコーで算出した胆嚢収縮率も同程度に低下していた。油負荷後の胆嚢内の胆汁量を用手的に直接測定すると、 GPR120欠損マウスはWTマウスの2倍、GPR40欠損マウスは3倍量が残留していた。すなわち、OCTTでのGIP分泌量の低下はCCKや胆汁分泌量の低下率と相関関係にあることが判明した。CCKアナログに対する胆嚢収縮の反応性は3群間で保持されており、完全に収縮させることが可能であった。CCKアナログをコーン油と同時に投与した状況下では、 GPR120欠損マウスはWTと同等のGIP分泌量へと回復を得たが、 GPR40欠損マウスはWTの1/3のGIP分泌量に留まった。以上からGPR120はCCKを介してGIP分泌に寄与し、GPR40はCCKに依存せず直接GIP分泌に関与するより重要な受容体であることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
GPR40およびGPR120欠損マウスの解析はおおむね終了した。
今後はGPR40/GPR120ダブル欠損マウスの解析を行う予定である。またGPR40, GPR120, GPR40/120ダブル欠損マウスK細胞の解析を行う予定である。
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