研究課題
我々は以前に長鎖脂肪酸受容体GPR40とGPR120がK細胞に発現することを報告し、前年度にそれぞれ異なる機序で脂肪摂取後のGIP分泌に関与することを報告した。しかし両受容体を同時に欠失した状況下での、インクレチン分泌に関しては不明であり、今回両受容体のダブル欠損マウスにおけるインクレチン分泌の評価、K細胞の解析を行った。野生型(WT)、GPR40およびGPR120ダブル欠損(DKO)マウスを用いて経口ブドウ糖・コーン油負荷試験(OGTT・OCTT)を行い、GIPとGLP-1分泌を評価した。GIP-GFPノックインマウスと交配してK細胞を可視化し、上部小腸内のK細胞数やK細胞内の遺伝子発現量を比較した。OGTTではGIP、GLP-1ともにWTマウスとDKOマウスに有意差を認めなかった。一方、OCTT時にはDKOマウスのGIP分泌が、WTの90%以上減少し有意なGIP分泌を得られなかった。またGLP-1も有意な分泌を認めなかった。K細胞の数やK細胞内GIP遺伝子の発現は野生型マウスと同等であった。K細胞内のGPR120およびGPR40の発現はいずれも消失していたが、GPR119、FATP1-5、CD36等他の脂質関連遺伝子の発現量に変化を認めなかった。胆汁酸受容体TGR5発現もWTマウスと同等だったが、FXR発現はDKOマウスで有意に上昇した。以上から脂肪摂取後のGIP分泌を担う受容体はGPR120とGPR40であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
GPR120/GPR40ダブル欠損マウスのインクレチン分泌に関するin vivo, in vitroの実験はほぼ終了している。
DKOマウスで有意なGIP分泌を得られないことから、脂肪摂取後の脂肪酸感知はGPR120とGPR40の2つの受容体が担うことが示された。両受容体欠損によりK細胞数に変化はなく、K細胞内遺伝子発現も同等であった。唯一有意差を認めたFXRに関しては、GIP分泌への関与を示す報告はなく、またDKOマウスにおける胆嚢収縮障害を反映した二次的な変化である可能性もあり意義は不明である。よってFXRとGIP遺伝子発現やGIP分泌との関係についてSTC-1細胞を用いて明らかにしていく予定である。
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