研究課題
これまで我々はATP濃度によってOFP/GFP比が変化するFRETであるGO-ATeam1ノックインマウスおよびCa2+インジケータであるfura-2を併用して、膵β細胞内ATP濃度およびCa2+濃度動態同時測定を行い、同一β細胞内および隣接する膵島細胞間での代謝(ATP)・イオン(Ca2+)動態の変化を検討してきた。その過程で、同一膵島内のβ細胞間であっても、代謝やイオン動態が不均一であることを示唆する観察結果を得た。この同一膵島細胞間での代謝動態不均一性のメカニズムを検討するため、膵島細胞に対してシングルセル・レベルでトランスクリプトーム解析をおこない、膵β細胞が少なくとも4つの亜集団にわかれることを見出した。特に増殖膵β細胞と考えられる亜集団では、細胞周期関連の遺伝子群の発現が亢進するのに対し、酸化的リン酸化やATP産生に関する遺伝子群やホルモン分泌に関連する遺伝子群の発現が、他の3つの亜集団と比して、低下していることを確認した(International Symposium of Epigenome (ISE) 2019;Feb.3-4, 2019で発表)。引き続き、今回得られた上記結果をもとに、各群における遺伝子発現と細胞機能との関連性に関して解析を進め、遺伝子発現的にも機能的にも不均一であるβ細胞群が混在する膵島に関して、不均一であることの合目的性について検討を進めていく予定である。
3: やや遅れている
研究代表者の主たる所属が、昨年度(2017年度)以降、大学から一般病院に変わり、研究環境および研究体制が変わったことによる。
膵島細胞を用いたシングルセル・レベルでのトランスクリプトーム解析により今回得られた結果(膵β細胞が幾つかの亜集団に分類できる可能性)をもとに、各群における遺伝子発現と細胞機能との関連性に関して解析を進め、これら遺伝子発現的にも機能的にも不均一であるβ細胞群が混在する膵島に関して、不均一であることの妥当性・合目的性について、さらには膵島の正常機能発現および維持のためには均一でなく不均一であることが重要である可能性について検討を進めていきたいと考えている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)