研究課題
これまで我々はATP濃度によってOFP/GFP比が変化するFRETであるGO-ATeam1ノックインマウスおよびCa2+インジケータであるfura-2を併用して、膵β細胞内ATP濃度およびCa2+濃度動態同時測定を行い、同一β細胞内および隣接する膵島細胞間での代謝(ATP)・イオン(Ca2+)動態の変化を検討してきた。その過程で、同一膵島内のβ細胞間であっても、代謝やイオン動態が不均一であることを示唆する観察結果を得た。また並行して行なっている、膵島細胞を用いた単細胞トランスクリプトーム解析から、膵β細胞の中にも遺伝子発現の不均質性があり、インスリン遺伝子、ミトコンドリア代謝関連遺伝子、小胞体ストレス遺伝子および増殖関連遺伝子などの発現にばらつきがあることが観察された。またこのばらつきが、複数の刺激によって動的に変化することが示唆され、膵島に対して刺激を加えた状態でATP濃度の解析を試みているが、単離膵島を用いて刺激を行なった場合、刺激によるATP濃度の変化を捉えるのが困難であるため、vivoでの計測のため、機材を製作し条件検討を重ねている。また、vivoでは測定域および解像度の点で勝るGO-ATeam2KIマウスを用いて行う必要があるため、膵β細胞特異的にCreを発現するマウスと交配し今回作出を行なった。さらに、このGO-ATeam1マウスの膵島を用いて、フローサイトメトリー上でOFPおよびGFPの輝度によるソーティングを行い、カルシウム濃度との関係や、ATP濃度と遺伝子発現の関連について解析を行うべく条件検討を行なっている。
3: やや遅れている
研究代表者の主たる所属が、2017年度以降、大学から一般病院に変わり、研究環境および研究体制が変わったことによる。
膵島細胞を用いた単細胞トランスクリプトーム解析から、膵β細胞間にも遺伝子発現の不均質性が存在し、インスリン遺伝子、ミトコンドリア代謝関連遺伝子、小胞体ストレス遺伝子および増殖関連遺伝子などの発現にばらつきがあることが確認された。β細胞間の機能的不均一性にとどまらず遺伝子発現レベルでも不均一なβ細胞群が混在する膵島に関して、膵島としての正常機能発現および維持のためには、β細胞が均一ではなく、むしろ不均一で存在することが重要である可能性について今後も継続して検証を進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Sci Rep.
巻: 9 ページ: 15562
10.1038/s41598-019-52048-1